何故か私の名前を知っている灰色のスーツをきっちりと着込んだ、
めちゃくちゃ普通だとしか言いようのない男に案内されて。
私は巨城の中の、閉じられた大きな扉の前に立たされていた。
「……ここでどうしろと? 入れってこと?」
ちらりと後ろを振り向いてみると、すでに男はいない。
はあ……仕方ない、入ってみるか……。
手のひらにぐっと力を入れて、ゆっくりと扉を開い――
「はーははははははははは!!!」
「ほーっほっほっほっほっ!!!」
扉を開けたそこには変態執事と、悪の女魔道士がいました。
……私も対抗して、笑い声を上げてみようかなあ?
だけど、何だかあの2人と一緒のカテゴリーに入れられるのを、
残されている私の本能が静かに制している。
本能っていうか、状況適応能力みたいなものかもしれない。
今回は止めとこう……。
類されたら嫌な予感がする。
ちらりと目線を動かすと、長いテーブルには3人の人物が座ってる。
いや、正確には似合わない派手なのに身を包んで、幸せそーな顔して
高笑いする2人を見つめてる何か妙なのと、硬直してる栗色の髪の少女、
そして椅子ごと倒れている青年。
……妙なのを抜いて、その場にいる全員知ってるよ、私。
それにしても、どういう世界なんだろう、これって?
L 様の世界じゃないはずなのに、そこにいるのはリナと仮面ナーガ。
それに……オーフェンと仮面キース……?
「むう?」
扉の前で突っ立ってたままの私に、妙なのが気がつく。
「そこの者! そなたは何者であるか? 余はそなたのような者を
サンプルにした覚えはないが」
「……私もサンプルにされた覚えはないよ。何ていうのかな……
お仕事というか」
「む? 仕事であるか?」
怪訝そうに首を傾げられても困る。
っていうか、本当にここは何の世界なのさ?
リナとオーフェンがいる。
高笑いし続ける仮面ナーガと仮面キースがいる。
でも、L 様が言った通り、ここは L 様の世界じゃない……。
「ここって誰の世界ですか? そしてあなた誰ですか? 彼女たちと
彼たちはどうしてここにいるんですか?」
私は唯一、この状況を語れそうな妙なのを見てそう聞いてみる。
妙なのは一瞬だけ、私に何を聞かれているのか分からないような
顔をしたけど、すぐに堂々と胸を張る。
敬語なのが嬉しかったのかな。
そしてえらく上から目線のしゃべり方で話し出した。
「うむ、我が名はヴォイム――創造主であり神である存在だ。
ここは余が創り出した世界である。そしてそこにいる者たちは
我が世界の住民のサンプルとして、呼び寄せた者たちである」
「……創造主ヴォイム……ねえ」
「うむ」
その妙な、小さい子供が安易に思い描くような、すっごく派手な格好は……
あれか、 “王様” って表現なの?
何か……ものすっごい似合わないと思うのは私だけかな。
NEXT.