「うえっ」
何だか変な気持ち悪い感触から忽然と抜け出す。
軽く頭を振って辺りを見回すと、私は薄暗い霧の中に立っていた。
ここが、 L 様の世界じゃない世界。
方向もよく分からないまま、静かに石造りの道を歩き出しながら苦笑する。
「うわー……何だろ、いかにもこの町は怪しいですよーっ!! って
大声で叫んでるようなもんだよねえ……」
これが D.グレの世界だとしたら、普通にファインダーが何回も
調査しに来てるような町だよ……。
霧は冷たいけど、マントがあるおかげで寒くなくて安心する。
北へ南へひょいひょい行方をくらます行動をとる師匠との修行の中で、
寒さ暑さには結構強くなった方だと思う。
だけど、まったく気温を感じないってわけじゃないからね。
いや私人間だからね!
しばらく歩いてから足を止める。
ゆっくりと霧が薄まって、少し先の噴水が見えてきたから。
「ああ、噴水ね……。」
静かに水を噴出す噴水に、私は嫌な記憶を思い出す。
夏場の出し忘れた生ゴミの袋から漂う酷い悪臭がしそうな感じの、
ほどよく腐って溶け始めてきて丸まった人体模型……おまけにご丁寧に
たくさんの大砲つき。
千年伯爵の玩具である兵器…… AKUMA に初めて遭遇した時。
あの時に思わず思った形容詞は、よく覚えてる。
D.グレの最新刊と小説を買って、本屋から出て。
やっと手に入れたと、早く読もうと、上機嫌でスキップしながら
家に帰る途中で――何の脈絡もなく迷い込んだ洋風の町。
振り返った所にあった噴水が、いきなり目の前で壊れて。
いきなり AKUMA に襲われて……ものすごく驚いた。
そう……それを見て、私は思わず言ったよ。
「雪里様ですね」
不思議ミステリー
「……再来」
なーんて。
NEXT.