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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

第2章 台風11号 強さに適うものは何でしょう?(2)





するとアルは、少し間をあけてからぽつりと私に聞いた。

「――どうしてセツリは……僕のこの体のこととか、聞かないの?」

その言葉に私は軽く目を見開いた。
まさか、そんなことを聞かれるとは思わなかったけど……。
今までの経験から、不思議に思ったんだね。

アルの鎧の中を見た人たちは 『からっぽ』 だという事実に、
誰もが驚いてきたんだろう。
なのに、私は2人の腕や鎧が壊れていることにだけ驚いた。

何故、エドはオートメイルなのか。
何故、アルの鎧の中身がないのか。
そんなことは一切聞かなかった。

私は理由を知ってるけど、2人は何も知らない。

ただ母さんの笑顔が見たくて――2人が禁忌を犯した過去。
それを知ってるだなんてこと。
アルを助けようとエドが魂を練成したこと。
そのことをアルが恨んでいると、エドが怖がっていること。

――知っているなんて。

私のことを忘れていたとしても、そのことを秘密にするなら、
2人に理由を訊いた方が正解だったのかもしれない。
けれど、私は嘘でも訊きたくなかった。

「……アル」

静かにアルの名前を呼んで、私は彼をまっすぐに見やる。

「アルにとって、その身体はどういうもの?」
「僕にとってこの身体は……」

答えようとしたアルの言葉が、ふいに途切れる。
まあ……アルが恨んでるなんてことはまったく思ってないけど。

「私は……その時、2人の処にいなかったから、よくは分からない。
 でも、私はアルの身体を否定なんてしないよ。身体がどんなであれ、
 アルはアル……それだけなんだから。エドの右腕と左足もね」

私はアルから背を向けて、空を仰いでみる。
だけど、すぐに振り返って笑った。

「覚えておいて、アル。結果はそうだったのかもしれない。だけど、
 その動機は? その過程は……? 他人から見たら確かに結果が
 全てかもしれない。それでも私は、罪と罰が全てイコールで
 結ばれるとは思えないこともあるんだ。……こうしてある結果を、
 そうだと決めつけるには、まだ早いからね」

それだけ言ってから、私はその場を離れた。
私の言葉は客観的に言ってしまえば、とても “あいまい” で、かなり
“きれいごと” なのかもしれないと分かってる。

かつて娘と、姉だと呼んで私を救ってくれた人たちだから。

あーあ……。
これも一種のエゴなのかな……?

ふと、向こうの方を見るとエドとデンが見えた。
しばらく突っ立って待ってると、最初にデンが気がついてそのあとすぐ、
エドが私がいることに気がついた。

「ワンッ!」
「あれ……デン……?」

デンはしっぽを振りながら走りよってきて、私の足に擦り寄ってくる。
その仕草が前とまったく一緒だったことに気がついて驚く。
……まさかデンって、私のこととか覚えたり……?
いや、そんなわけないか……。

デンの頭を一撫でしてからエドを見る。
少しおぼつかない足取りでこっちに向かってくるエドは、
私を見て首を傾げてる。
私はそんなエドに、微笑んだ。

「おかえり、エド」
「あ――うん……ただいま、セツリ





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