ウィンリィたちがオートメイルを作る作業に入ってから、
とたんに何もすることがなくなってしまった私は庭に出てみる。
そこにエドとアルを見つけて、近寄った。
「やあ」
「あ、セツリさん」
「エドもアルも普通に呼び捨てで構わないって」
私も2人の隣に腰を下ろしてみる。
すると、暇そうにねっ転がってたエドが起き上がる。
そして私の方を見上げてきた。
「それじゃ……お言葉に甘えてセツリって呼ばせてもらうけど……
セツリって、俺たちの母さんと知り合いって本当か?」
「うん、もちろん」
私は青い空を見上げた。
「……ここに来た時の私はどうしようもなく、途方に暮れてたんだ……
急に、大事な子を連れてかれちゃってね。どこに行ったらいいかも
分からなくって……。そんな風に一人ぼっちだった時、トリシャさんと
会ったんだ。優しい笑顔で“ここにいていい” って言ってくれて、
恥ずかしいけど嬉しくて泣いたなあ。私がここにいたのは、少しの間
だったけど……トリシャさんには本当に感謝してるよ」
真剣な顔で話を聞いてる2人に、私はふと笑う。
……エドたちは、本当に私がここにいた事を覚えてないんだね。
あの時くれたこのペンダントのことも、覚えてないし。
一緒に過ごしたことがある日も――全て。
分かってる。
でも、少しいじわるしてみようかな?
「思い出した。私ってエドとアルに会ったことがあるよ」
「ええ!?」
「それって……セツリが母さんと会った時に?」
「トリシャさんの後ろで私を見上げてた男の子が2人。今思えば、
あれは絶対にエドとアルだね」
エドとアルは顔を見合わせて首を傾げる。
私のことを何とか、思い出そうとしてくれてるんだろうけど……。
でも真理に持っていかれた対価は、戻らない。
それを取り戻そうとするなら、また別の対価が必要だから。
NEXT.