「あれ? セツリ、腕と足んとこ切れてんぞ?」
ハボック少尉の言葉に、手足を見てみる。
「……え? 嘘……別に当たったつもりはなかったんですけど……」
「んー、少し深そうだぞ。ほらここだ、ここ」
「本当ですか? ……ああっ! 血がついてますよ!! 出血はもう
止まってるみたいですけど、手当てしておきましょう!」
慌てるフュリー曹長に、思わず苦笑してしまう。
「あはは……すみませんフュリー曹長……」
「セツリくんから見れば、その場所はほとんど死角ですからな」
「ああ、真後ろっぽい所だからな」
「……えーっと……うわあ、本当だ……あっちゃー。どうしようかな、
一張羅なんですけどね……この服は……」
「それなら、破けた所を私が繕いましょうか? 私の軍服のお古で
良ければ着替えはあるわよ。そうね、良ければそのまま貰ってくれると
嬉しいわ」
「(リザ中尉のお古の軍服ッ!?)で、でも悪いですし」
「私にはもう小さくて着られないし、処分しようと思っていた所だから
いいのよ。……ああ、でも私の軍服のお下がりは嫌かしら?」
貰うってば!
「あ、いえいえ、そんなことはありませんけど……」
「それなら、貰ってくれるかしら」
「は……はあ」
「それはじゃあ決まりね。ロッカーから今すぐ持ってくるから、
ちょっとだけ待っててちょうだいね」
「分かりました……」
私が頷くと、リザ中尉はすぐに部屋を出て行く。
「中尉が変えの服、持っててくれて良かったな」
「本当に恐縮です……何から何まで……。っていうか軍服ってもらって
平気なんですか? 私一般人ですけど?」
「数年前に、ちょっとした所だけど制服が変わってるんだ。今はその
軍服は廃棄されてるから、公じゃなければ大丈夫だよ」
「こっちこそ手伝ってもらったんだから、そう気にすんな!」
「その通りです」
……何だろう?
リザ中尉がすごく積極的だったのは……。
いやむしろ、今は私、男って思われてるはずじゃ……?
というよりも、古いもので廃棄されてるから大丈夫って言われても……
軍服は普通貰っちゃいけないような気が……。
「セツリくん、救急箱持ってきましたよ!」
「どうもすみません。ありがとうございます」
「ほれ、支えててやるから腕出せ」
「はい」
それは大佐が帰ってくる、少し前のこと。
NEXT.