「さてと……。それじゃあ、私はこれから行く所があるので……
この辺りで失礼させていただきますね」
「ああ、そうね。引き止めてしまってごめんなさい」
「そんじゃ、送ってくな」
腰を上げて煙草を咥え直すハボック少尉に、私はきょとんと
目を丸くした。
「こんな時間まで調書のために色々と質問攻めにしちまったし、
ちょうど鋼の大将を迎えに行く時間でもあるからな」
にかっと笑うハボック少尉は時計を指差す。
確かに、もう少しで5時になる。
皆との会話が楽しくて、時間なんてほとんど忘れてたな。
私は時計とハボック少尉を見比べてから、にっこりと笑った。
「それじゃあ、駅までお願いしてもいいですか?」
「あ。そういえば……お前らにセツリから伝言預かってんだった」
「え? セツリさんからですか?」
ハボックは運転しながら、思い出したように声を上げる。
それにアルフォンスが後部座席から聞く。
「 “今日はお互いに大変だったね。また会うことが出来たら、
その時はゆっくりと話そう” ……だってよ」
「え? セツリさんって、もう行っちゃったんですか?」
「ああ、どっか行く所があるらしくてな。お前らのことを迎えに行く前に
駅まで送ってったんだ」
「……そうなんですか。もっと話したかったのに……」
残念そうに呟くアルフォンスに、エドワードは振り向いた。
「そういえばお前、汽車の中でセツリさんと一緒だったんだよな?」
「うん。すっごく兄さんと似てる人だったよ」
その言葉に目を見開くエドワード。
しかしハボックは、エドワードとは違って大いに爆笑した。
いきなり笑い始めたハボックに2人は驚く。
そしてくっくっと笑いながら、ハボックは言う。
「それはセツリに聞かせてやりてーな! セツリも言ってたぞ?
“お前ら2人は、自分の弟に似てるんだ” ってな!」
「えっ?」
「それって僕も……ですか?」
「おう、2人ともだ。お前らに似てるのが喧嘩すると、止める役目は
いつも自分だったんだと」
『こーら、2人とも! いい加減に喧嘩止―めーろっ!』
『まったく……お前らは仕方ないなあ……』
『さあ、母さんのとこに帰ろう!』
水を持って扉を開けた、そこには――?
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