「……ああ、こんな時間まですまなかったね」
「いえいえ大丈夫ですよ。皆さんのおかげで、とても有意義な時間に
出来ましたから。マスタング大佐もお疲れ様です」
「そうかい? そう言ってもらうと助かるよ。ありがとう」
いやいや、聞かせてもらって面白かったよー。
特に大佐の過去話とか、色々な武勇伝とか。
「そういえば、セツリくん」
「はい? 何ですか、ホークアイ中尉」
私は疲れたようにイスに座る大佐から目を離して、声をかけてきた
リザ中尉の方を見上げた。
少し首を傾げながら、リザ中尉は私にあることを訊いてきた。
「セツリくんは、エドワード君とアルフォンス君に以前会ったことが
あるのかしら? 何だかとても良く知っているような口調だったから、
さっきから少し気になっていたのだけど」
思わず、くすりと笑った。
「そうですね、何て言えばいいんでしょうか。あるといえば、
あるような……ないといえばないような感じですね」
酷く曖昧な私の言葉を聞いて、大佐が振り向く。
表情はどこか不思議そうだったけど、その目だけは違う。
こういう目を、ずっと前に師匠から浮けたことがあったっけ。
そう、私とアレンが弟子になった日の夜――。
師匠がずっと弟子を持ったことがないのを知っているような、
そういう軽い発言を私がした時だった。
ああまったく、鋭い人は怖いよ……。
大佐の視線に気づかない振りをしてリザ中尉に微笑みを向ける。
「弟が、あの2人に良く似てるんで重ねちゃうんですよ」
「へえ? セツリくんって弟がいるんですね」
「はい。実は3人います」
笑いながら頷いて、私はフュリー曹長にそう答える。
血はまったく繋がってないけどね!
「3人も? そんでセツリが長男なのか? そりゃー大変だろうなー」
「ええ、もちろん大変でしたよ。上は落ちついてる方なので、
そうでもなかったんですけど、下の2人がね……。喧嘩し始めると、
いっつも止めるのは私の役目だったんですから!」
何だか次から次へと答えてるうちに、普通にちゃんとした兄弟設定が
出来てしまった……。
1番上・私、2番目・アレン、3番目・エド、4番目・アル。
ああ、でもアレンと今のエドって確か15歳で同い年だった気が。
そうすると……。
1番目・私、2番目双子兄・アレン、双子弟・エド、4番目・アル?
ヤバい……。
この兄弟設定はかなり笑える……!!
思考を抑えないと。
今度は両親とか祖父母の設定とか、色々考えちゃいそうだよ。
このまま異世界渡ってくと、すっごい増えそうな気が。
そういう意味で頼れる人が出来たら……嬉しいけど。
NEXT.