「いいいでぇええー!!」
「おい! どうし……うわぁあああっ!!!」
男の倒れた音と叫び声に、他の男が駆け寄ってきて銃を撃つ。
「……って跳弾痛ぇええーっ!!」
「おじさんたちアホですか」
銅壁が容赦なく呆れたように言うのに対して、私はただそれは
同感だと頷くに留めた。
一目でも見やれば、跳弾してきそうな銅壁だってことはすぐに
分かると思うんだけどねえ。
……というか、驚きまくってそんな余裕はないのか。
私たちみたいなのに抵抗されるだなんて想定してなかったろうし。
このまま他の仲間を呼ぶための叫ばれても困るから、ハリセンスで
叩くとぱったり意識を飛ばした。
あーもー、こういう手下って弱いねっ!
「大丈夫ですか?」
銃弾から庇ってくれた銅壁が話しかけてきたことに別段驚きもせず、
私はゆっくりと見上げた。
銅壁は、とても大きな鎧だった。
うーん……かなりでかくてごつい。
この状態の鎧を他で例えるなら、そうだなあ……。
スレイヤーズで言うと、リビング・メイルってものかな?
私はにっこりと笑ってひとつ頷く。
「大丈夫だよ。庇ってくれてありがとう」
「そうですか……間に合って良かった。まさか僕たち以外でも犯人に
反抗してる人がいるとは思ってなかったので……」
「つい条件反射で、奴らを倒しちゃったからね」
「……兄さんと似てる……」
半場呆然としたような声で鎧が呟く。
その言葉に、私は小さく笑った。
「それなら君のお兄さんも、結構破天荒なんだね。ああ……ってことは、
さっき上を走ってったのは君のお兄さんかな?」
「あ、はい。多分そうだと思います」
鎧は見かけによらず、丁寧に答えてくれた。
まあ……これでいきなり性格が違ってたりしたら多分私は泣いてたと
思うよ、わりと本気で。
「ふふ。それじゃあ、少し急いで行かないとね。私と似てるんなら、
結構派手にやるかもしれないよ? お兄さんは」
あれ?
っていうことは、ある意味似させたのって……私……
なのかもしれないな……。
ある意味で、今のエドの性格ってのは。
「ええっと……そ、そうですね……? ……あ、僕はアル、
アルフォンスって言います。アルフォンス・エルリックです」
「――私はセツリ・ナカノ。セツリでいいよ」
『あー、あー、反抗グループの皆さん、機関室および後部車両は
我々が奪還いたしました』
やっぱり、派手にやってるなあ。
私とアルはドアの前に潜んで、中から響いてくる声を聞く。
ふと、アルが小さな声で私に話しかけてきた。
「……セツリさんならこのあと、どうしますか?」
「私?」
エドのからかうような言葉に反発してるのは、おそらくこの列車を
ハイジャックしてた奴らのリーダーだろう。
残念交渉決裂!
まあ、最初から交渉っぽくはなかったけど。
「……水道管を開けるね」
「やっぱり。危なくないように僕の後ろにいて下さい、水がすぐに
溢れるのでここを開けますから」
「ありがとう」
ドドドドドドドドッ!!!
突然、大地震のような轟音が上がる。
その音が響くと、アルが素早くガラッ! とドアを開けた。
すると、水の急流に乗って数人の男たちが流れてきた。
「いらっしゃい」
強く拳を打ち鳴らしてアルが犯人たちに優しく言う。
だけど、それは逆に怖いよ……アル……。
男たちの青ざめていく顔に、私はちょっと同情っぽいものを覚えた。
ご愁傷様。
あとに残るは、悲鳴だけ?
NEXT.