小さな女の子に銃を向けてた男は、あっけなく床に崩れ落ちる。
他にも我に返ったのか、2、3人私に向かってきた。
だけど、私のハリセンスの前には敵無し!!
そして1分も経たないうちに、向かってきた全員を倒した。
……何だか意外と、あっさりだったかも……?
「ふえっ……?」
「怪我はないよね?」
震えて泣いてた女の子の頭を、怖がらせないように優しくゆっくりと
撫でながら顔を覗きこむ。
呆けたように瞬きする女の子は、きょとんと私を見上げる。
「おにいちゃんが……たすけてくれたの……?」
「うん。もう大丈夫だから、お母さんと一緒にじっとしててね」
「……うん! ありがとうっ!!」
ぱたぱたと笑顔で走ってくる女の子を、泣きそうに安堵した顔で
ぎゅうっと抱き締める母親。
私の方を振り向いて、深く頭を下げた。
それを見て微笑んでから、改めて周りを確認する。
いつのまにか乗りこんでいたらしい汽車は、どうも武装した変な奴らに
ハイジャックされていたみたいだった。
紐を練成して犯人をきつく縛り上げ、隅っこの方へと放置しとく。
窓から外を見てみると、私がいたのは後ろの方の車両。
「えっと……皆さん、私は前の車両の様子を見て来ますから、
出来たらこの車両を動かずにいて下さいね?」
「し……しかし……君が危ないんじゃ!!」
「いえ、私は今の手段がありますから大丈夫ですよ」
「も、もしかして、君は国家錬金術師なのか?」
「ただ錬金術が使えるだけですよ」
軽く肩をすくめながらそう言って前車両へと続くドアを開けると、
後ろから嬉しそうな女の子の声が飛んできた。
「おにいちゃん、きをつけてね!」
「うん!」
私はにっこりと笑ってドアを閉める。
いやー、でも目覚めたらハイジャックなんて大騒ぎだね。
さーてと……?
何となくなりゆきで顔突っ込んじゃったけど……。
ゴンゴンゴンゴンゴンッ!
ふいに聞こえてきた音に顔を上げて上を見上げる。
……漫画とかアニメとかで良く見かけるシーンではあるけど、
あの風圧でどうして汽車の上を普通に走れるんだろう……。
言ったらおしまいだけどね。
今更ながら私の存在に気がついて向かってくる犯人の男たちを、
練成したハリセンスでスパンスパンと倒す。
すると後ろから、銃の引き金を引く男がいるのに気がついた。
「くそっ……死ね!」
「誰が。」
バキン!
キンキンキィンッ!!!
銃弾を叩き返そうとハリセンスをしっかり構えた時には、もうすでに、
私の前には大きな銅の壁があった。
その銅壁が、飛んでくる鉛弾を跳弾してくれたみたいで。
彼は変わらない声で言った。
「跳弾して危ないよ……って遅いか」
NEXT.