「――ちゃん、セツイr姉ちゃん!!」
「………………。」
ゆっくりと、目を開ける。
すごく哀しそうに眉を寄せたエドとアルがいた。
珍しい表情をした2人が、私の顔を覗き込んでる。
私は軽く2人の頭を撫でてやった。
「2人とも、どうしたの?」
「だって姉ちゃんが……うなされてたからっ……」
「すっごくすっごく、苦しそうだったんだよ?」
その言葉に私は少しだけ目を見開いて、苦りの強い苦笑を浮かべた。
もしかして、そのせいかな。
「……私は何か寝言を、言ってたみたいだね? 何て言ってたか、
教えてくれるかな」
エドとアルは目線を彷徨わせる。
どう言っていいのか分からないような表情をしている。
しばらくした後で、2人は私にゆっくりと抱きついてきた。
「……言う。言うから……」
「姉ちゃん、どこにも行かないよね?」
そんな2人を、私はもちろん抱きしめた。
「 “もう会えない” 」
「 “ごめんね” 」
「 “ありがとう” 」
「…… “泣かないで” ……」
「――そうか。……そう、言ってたんだ……」
ぎゅっとしがみついてくる2つの暖かさ。
私は素直に甘えるように、優しく腕に力をこめた。
もう一度、皆に会いたいと思う。
けれど、もう会えないとも思う。
勝手に消えてごめんね。
私の存在を認めてくれてありがとう。
絶対忘れないから、泣かないで?
だけどお願いだから忘れないで……。
私の存在を忘れないで。
私は本当にそこにいたから。
「ほらほら……何でエドとアルが泣くかな?」
「「だって!!」」
「まったくお前たちはしょうがないな」
「ねっ、姉ちゃんだって泣いてるじゃんか!!」
「兄ちゃんの言う通りだよっ!」
うん、泣いてるよ。
本当にこの世界に来てからは、どうにも涙腺がすっごく弱く
なっちゃったみたいだなー。
異世界に来る前は、ほとんど泣いたことがなかったのに。
思ったより、さほど嫌ではないんだけどね?
“家族” と呼べる人がいるからかな。
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