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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

第2章 台風2号 暖かな笑顔(3)





部屋に入ってきたのは、綺麗な女の人。
栗色の髪を右側でまとめて一本にしていて、それを右肩から
前に垂らしている。
とても、優しくて穏やかそうな人だった。

「おはよう……と言っても、実はもうお昼の1時をすぎているんだけど。
 熱は、もう大丈夫そうね」
「……あ……」

私の額に手を当てると、女の人はにっこりと笑った。
とても久しぶりに見たような笑顔だった。

「あ、あの、ありがとうございました」
「いいのよ。うちの庭に倒れていたのも、何かの縁だと思うわ」

縁というよりハメられた……のが正しいと思うけど。
それは言っちゃいけないだろーね。

思わず遠い目でそんなことをぼんやり考えていると、女の人は
扉の向こうに向かって、入っていいわよとひと声呼びかける。
するとおずおずと扉が開いて2人の幼い少年が顔を覗かせた。
女の人と違う、金髪金眼のやんちゃそうな男の子たち。
好奇心を丸出しにして、こっちを見つめてる。

「紹介するわね、この子たちは私の息子のエドワードとアルフォンスよ。
 私はトリシャ。トリシャ・エルリックよ。これから宜しくね」
「あ、私はセツリ……セツリナカノです。よろし」



これから?



ふと、私は言葉を止める。
相変わらずトリシャさんはにこにこにこにこと始終笑ってる。

「……あのーすみません、これから」
「さ、2人とも! ピナコさんを呼んできてくれるかしら? どうやら
 もう熱はないようだけど、一応診てもらわないとね」
「「分かったー!!」」

そして、またばたばたと走っていく2人。
いやだからそうじゃなくて、あのう……トリシャさん?
……これから……って……一体 ――。

「貴女の帰る場所はどこなの? セツリ
「――っ!」

心を読まれたかのように。
あまりに突然すぎて、私は言葉が詰まって答えられなかった。
答えることが出来なかったからだとも、言える。

私の……帰る場所か……。
今までいた黒の教団か、それとも本当の家?
そもそも……どうやって帰ればいいんだろうか?

「帰り方が分からないなら、ここでゆっくり探すといいわ。
 探して探して、それでも見つからなかったらここにいるといいわ。
 だから今日からこの家は貴女の家よ。この家を、今の貴女が
 最初に帰る場所にすればいいわ」
「……トリシャ……さん……」
「母さんって呼んでくれると、嬉しいかしらね?」

彼女は悪戯っぽそうに笑った。
私はそれに思わずつられて、苦笑のような笑みを浮かべた。

「……母さん」
「なあに? セツリ





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