いつもみたいに槌に乗って、任務から戻ってきた。
けれどやっぱり、間違えたブレーキの加減。
そう何度も何度も、城壁に穴を開ける訳には行かない。
それに帰ってそうそう、じじいに怒られたくない。
何とか森の方に行き先を変更してみる。
とりあえず、これで城に被害はないだろうと安心する。
だけどその瞬間、自分の突っ込む方向に人影が見えた。
修行中のユウかと思ったけど、それも違ったようで。
やべえと焦りながら、そこをどくように叫んだ。
……結局、突っ込んだけど。
「普通に教団新入りの、エクソシストです」
第一印象は “何か綺麗な奴” だと思った。
何かユウとは違って、雰囲気的に 『柔』 って感じの印象?
風になびく黒髪も、驚いて見開く双つの黒い瞳も。
「私はセツリ・ナカノで、この子が白雪」
それから見かけるたび、白猫のゴーレムと一緒にいる。
楽しそうに笑ってて、何かあれば俺たちをからかう。
どこか憎めない笑顔で、性格で、雰囲気で。
いつも周りを巻き込んでく。
「あ! ラビ神いたんだ」
第一印象が抜けた後は、 “空気みたいな奴” 。
気がつくと周りに溶け込んでて、違和感なく存在を示す。
白猫を肩に乗せて自信ありげに笑ってる。
誰にも屈せず、物怖じせず、ただあるがままそこにいる。
あいつはそういう奴なんだと不思議に納得した。
だからこそ、赦されてる気がして。
そういえば同じ任務に出かけたことがない。
今度そうしてくれるよう、コムイに頼んでみるのも悪くない。
きっと、あいつも笑って頷いてくれるだろう。
「ラビ、室長がカンダと一緒に司令室に来てくれとさ」
「ユウと? ってことは、任務なんさ? リーバー班長」
「今回は俺も良く知らんが……話があるらしいぞ」
「ふーん……分かったさー」
まだまだ 知らないと いうのに
それを 教えても くれず
笑顔で はぐらかした まま 。
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