そいつに初めて会ったのは、教団でだった。
イノセンス収穫無しの任務から帰ってくれば、
うるせえ門番のデケェ悲鳴が響いてきた。
そしてその後に続く、かなりイラついた怒鳴り声。
イラついてんのはこっちだ。
そいつはヘラヘラと笑う、ふざけた奴だった。
変な歌を歌いだした時には気が狂ったかと思った。
だが俺の攻撃を軽々と紙一重で避ける動きには、
まったくと言っていいほど無駄がなかった。
……ふざけた奴のイノセンスも、結局ふざけていた。
人間だと分かったそいつは、新入りのエクソシストになった。
睨んでも皮肉っても、ヘラヘラ笑うそいつに呆れ果てた。
「私は神田と同じく日本人の仲野雪里」
エクソシストだが、室長助手……科学班の雑用みたいなことも、
モノズキなことに自分からやってたみてえだった。
だから俺の報告書を担当するのは、ほとんどそいつの仕事になってた。
2年の間それは変わらずに、俺も抵抗するのを諦めた。
「神田、任務お疲れ」
いつも一緒にいる白猫のゴーレムの白雪。
白雪を造ったのがそいつだと知った時には正直驚いた。
そいつらは本当に何があってもなくても、ずっと一緒にいた。
依存しているわけでもなく、ただ強い信頼がそこにあった。
モヤシを斬ろうとした時。
そいつは迷うことなく白雪を間に入らせた。
「白雪を絶対に切らない、と思ったからだよ」
何の根拠もないくせにそいつは笑ってそう言った。
それはいつもの、ヘラヘラした顔じゃなかった。
わけもなく俺はイラついた。
今は任務に出ていてそいつはいない。
いつもうるせえのがいないと、調子が狂ってまたイラつく。
カルシウムとれとか、いつもうるせえ奴だからな。
「ユーウー!」
「そう呼ぶんじゃねえって言ってんだろっ!」
「まあまあ。コムイが俺たちを呼んでるさ」
「……何だ、任務か?」
「いや? 何か話があるらしいさー」
「ちっ……」
ヘラヘラ 笑ってる奴の ことで
何で イラつかなきゃ ならないんだ
何で俺を イラつかせる 。
NEXT.