「コムイ室長、失礼しまー、ん? アレンに神田も」
「来たね、セツリくん」
「あー、すみません。まだ話中でしたか?」
ノックして部屋に入るとソファにアレンと神田の2人が座り、
リナリーが渡した資料を手に持っていた。
一度出直してこようかと、私が踵を返そうとするとコムイ室長が
立ち上がって慌てて止めてきた。
「ああ、いいんだよ、セツリくん! 君も任務の話だから」
「ってことは今回は2人と……ですか?」
「いや、2人とは別件なんだけどね」
何だ……。
アレンの成長ぶりを見られるかと思ったのに……。
再会したばっかりなのに絡みがないなあ。
この展開と状況からして、こないだ私が資料を用意したマーテルの
亡霊の任務だよねえ……絶対に……。
うーん、ララの歌も聞いてみたかったんだけど。
とりあえず抱えていたハンコ待ちの膨大な資料を机に置くと、
コムイ室長は急にげんなりとした。
「それじゃあ、兄さん。行って来るね」
「行ってらっしゃい! 2人とも、気をつけて任務頑張ってね」
どうせ神田は聞き流してるだろうけど。
それに一番気をつけてほしいのは、特に任務から帰って来た時だよ。
コムリンがものっすごい大暴走してるだろうからね。
はあ……また片付けが大変なんだろうな……。
「はい、セツリ。これが資料よ」
「ありがとう、リナリー。えーと 『クルセイドの街』 ……?」
「うん、そうだよ」
リナリーから受け取った資料に目を通しつつ、コムイ室長に目線で
問いかけると軽く頷く。
するとリーバー班長が、ばさりっ! と、大きく地図を広げた。
その中のひとつの地点を指差す。
私は白雪と一緒になって、そこを覗き込んだ。
「別名 『時が止まる街』 ――。その街に一度入ってしまうと、
全ての時が止まってしまうらしい」
リーバー班長の言葉に首を傾げる。
……時が止まる……?
“巻き戻る” ならミランダの時の事件で、その時から本格的に
ノアが動き出すんだけどね……。
そんな私の様子に気がつかず、コムイ室長は私を真剣に見てくる。
「ファインダーとの連絡も途絶えてる……至急行ってほしい」
「了解です。行こう、白雪」
「にゃん」
「ここが 『クルセイドの街』 ……?」
「ふにゃあう……」
痛いほどの寂静が満ちている街。
誰も、何も、いない街。
時が止まった街。
とてつもなく奇妙な空間の中。
そこに、私は白雪と一緒に呆然と立っていた。
街の中を数歩進んでは立ち止まり、きょろりと辺りを見回す。
私はその行為を数度繰り返した後でぴたりと立ち止まる。
そして内心の怪訝を隠すこともなく、表情にのせた。
「……どうしてだ……?」
私は “街の外” から、様子を窺ってたはずなのに。
目の前がブレるような感覚が走ったと思ったら、
私と白雪は急に “街の中” に立っていた。
まさか、この街も今のも AKUMA の仕業……ってこと?
だけどまさか……。
こんなことや大規模な仕掛けを出来る AKUMA なんて
「こんにちワv」
いない。
そういうことか……。
NEXT.