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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

第1章 台風9号 ようやく再会だぁっ!!(3)





ほどなくして、コムイ室長の机からボロボロヨレヨレになった
クロス師匠からの紹介状が見つかった。
いくつものクモの巣にまみれた資料が山積みの、仕事机の、
本当に本当に奥底から。

はああ……。
私の深い溜息と声だけが、大きく周りに響いた。

「……アレンは私の弟弟子ですよ……」
「はい! そーいう事です。リーバー班長、神田くん止めて!」
「たまには机整理してくださいよッ!!」


まったくだ。
私だけの手でいくら整理しても追いつかないって、この2年間で
本当に分かってるしね。



「呪われてる奴と握手なん」
「アーレーンーッ! ようやくここに辿り着いたねーっ!!」
「ぐげふっ!!!」

私は階段から飛び降りて、そのままアレンに抱き付いた。
機嫌が悪そうな神田がアレンに何かを言ってて、抱きつかれたアレンが
苦しげにうめいたのは気のせいだと思う。

うん。
両方とも照れ隠しの聞き間違いだ!

私はそのままの体制で、神田の方を見た。
眉をひそめた神田と目が合う。

「神田、任務お疲れー。手当てはもういいんだ?」
「てめえな……」
「んーと、報告書の方は……そうだねえ……別にもう少し後でも
 いいと思うから、忘れずに私の所来てよ」
「チッ……」

またそうやって舌打ちする。
すたすたと自分の部屋へ戻っていく神田の後ろ姿に私は軽く
ひらひらと手を振ってみせた。
そこでようやく、アレンが咳を止めて私の方へ振り向く。

少し驚いたような顔をした後、呆れたように、けれど、
どこか安心したようにしながら柔らかに目を細めた。

「全然……変わってないね……?」
「うん、久しぶり!」
「まったく、セツリ兄さんは……」

私が笑って思いっきり頷いてみせると、アレンは肩を落とし、
少し照れくさそうに苦笑した。
抱きついたままだと動けないからいったん離れる。
すると、白雪が肩に上がってきた。

割り込むなんて危ないことさせたけど、ありがとね!

「それにしてもアレン、大きくなった?」
「2年も経ってるんだから、それくらい当たり前だよ!」
「ん――、それもそうか……」

あの頃のアレンは私の肩下くらいだったけど……今は少しだけ
小さいくらいなんだしねえ。

セツリ! あとは私が案内するわね」
「よろしくね、リナリー。それじゃ、私は一応部屋に戻ってみるかな?
 ってことでアレン、また後で部屋に行くから待っててね」
「……うん、分かったよ」

アレンの案内はリナリーに任せ。
私が自室へと戻ってみると、すでに神田が待っていた。
私を睨みつけながら、神田はイライラとした声で言ってくる。

「遅えよ」
「ごめんごめん――っていうかその怪我は平気なわけ?」
「こんな傷、2、3日経てば消える」

差し出された報告書にすらすらと名前を書きながら、身体に痛々しく
巻かれた包帯を見やった。
神田はそっぽを向きながら、面倒くさそうにそう答える。

どうして神田が信じられないほど早く大怪我が治ってしまうのかなんて、
私はくわしくは知らない。
だって神田とはそんな話が出来るほどの “距離” じゃない。
でも、この距離をとても楽に感じてる。

「……おい。あのモヤシと知り合いなのかよ」

……モヤシって神田……。
もしかして、君って名前を覚えるのが苦手なのかな?
私の事も最初、てめえ! とか、おい! とかばっかりで。
その後は確か……ハリセンだったっけ?
この2年で、何とか名前を呼んでもらえるようになったけど。

「ああ……神田、さっき聞いてなかった? 私とアレンはクロス師匠の
 弟子だって。つまりあの子は私の “おとーとでし” なんだよ。だから、
 アレンは白雪のことも知ってたってわけ」
「……おい」
「今度は何ですか……っと。よし、報告書出来上がりっ!」

誤字脱字がないかちゃんと確かめてから……。
うん、完璧、一つも間違いはないねっ!!



「何であの場に白雪を割り込ませた。白雪は、お前が一番
 大事にしてる奴じゃないのか」



その問いに神田の方を振り向く。
すると、神田は鋭く真剣な目で私を見やっていた。
私は内心驚きながらも、笑い飛ばすかのように肩をすくめた。

「神田は、白雪を絶対に切らない、と思ったからだよ」

それは確信した事実。
ごろん、と白雪がベットの上で寝返りをうって小さく鳴いた。






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