「コムイ室長!!」
ほとんど駆け込み乗車の勢いで、部屋に踏み込む。
薄暗い部屋の中、科学班の皆がローズクロスの浮かぶディスプレイを
じっくりと見ている。
そのディスプレイでは、神田と白髪の少年がすでに戦ってた。
あああ……やっぱりなのか……!!
愕然としてしまった私に振り向いたコムイ室長は、ディスプレイから
目を離してにっこりと笑う。
いやいやいや、私の心境は笑う所がないんですからねっ!!
「大丈夫だよー、セツリくん。今神田くんが……」
「神田を止めて下さい!! あの子、アレンはアクマじゃなくて――!!」
『待ってホント待って! 僕はホントに敵じゃないですって!!
クロス師匠から紹介状が送られてるはずで……あっ!?
も、もしかして、シラユキ……っ!?』
『……!?』
私が慌てて言う言葉を遮って、ディスプレイから必死なアレンの声が
響いてくる。
その時、神田を止めるアレンの肩の上に白雪が舞い降りた。
白雪を見た神田は、あと一ミリでも手を動かしたらアレンの眉間を
切れるだろうほんの数ミリの距離でピタリと刀を止めた。
うわあ……初対面から印象最悪だ……。
まあ、私も神田とはあんな出会いだったけどさ。
『元帥から……? 紹介状……? 何故、白雪を知っている』
『し、シラユキは前に紹介されたことがあるからで……紹介状は……
コムイって人宛てに。』
一斉に皆がコムイ室長を見た。
一体この状況は何なんだ!?
顔が大きい変な門番にアウトだって叫ばれたと思ったら、
いきなり知らない人に何だか斬られかかるし……。
しかも初めて腕が傷ついた……!!
「この六幻で切り裂いてやる」
殺気がかなり怖ッ!!
静止を聞かずに刀を構えて突っ込んでくるのに、僕は慌てて、
必死に手を振りながら止めようと叫んだ。
「待ってホント待って! 僕はホントに敵じゃないですって!!
クロス師匠から紹介状が送られてるはずで―――」
そこまで言った時。
僕たちの上をさっと白い影が横切り、上空を旋回して
間に割り込んできたその姿に、僕は目を見開いた。
純白の毛並み、胸の十字架の紋様、深い青の瞳、揺れる4本のしっぽ、
背中のふわふわした両翼。
僕が見間違えるはずがない、ふわりと僕の肩の上に降り立つ猫。
一緒にいたのはほんの10数時間程度だけど、あの人がとても
可愛がっていた、自慢のゴーレム。
「も、もしかして、シラユキ……っ!?」
「にゃん」
名前を呼ぶと嬉しそうに一声鳴く。
瞬間、後一ミリほどで僕の眉間を切れそうなくらいの距離で、
殺気を向けながらもピタリと刀を止められた。
う……動けない……!!
白雪は静かに、じっと彼のことを見つめてる。
どうしたらいいんだろうか、この状況は……?
あなたは知っていますか?
ここにいるであろう、あなたは。
NEXT.