忍者ブログ

黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

第1章 台風7号 ようやく入れた…(3)





「やー、どうも初めまして。科学班室長のコムイ・リーです。」
「どうも初めまして、仲野雪里と白雪です。あ、それと……これを。
 師匠からの紹介状です」

ポケットからさっきの紹介状を出して、コムイ室長に渡す。
それを引っくり返して差出人を確認して頷くと、コムイ室長は、
はははーと頭をかきながらお気楽そうに笑った。

「いやーまさか、あの人の紹介だとはまったく思わなくてねー。
 何せどっかで任務そっちのけで遊び呆けてるか、死んでるんじゃ
 ないかーってもっぱらの噂だったもんだからねえ」

師匠の性格からすれば、前者っぽいですけどね。
あの師匠は、絶対に教団のお金とか使ったりしないから……。
そのせいでどれだけ弟子である私とアレンが苦労し――。

あ……アレン、早くここに来るんだっ!!

「それじゃ、僕の後についてきてね」
「はい」

私はコムイ室長の後に従って、でかい逆三角形の乗り物? に乗りこんで、
今度は教団の下へ下へと移動してく。
……こんな原理のよく分からないすごいもの作れるなら、せめて
エレベーターとかエスカレーターとか作って下さいよ。
そう思わないのが不思議だよ、科学班の皆……。
……いやお城にはそぐわないかもしれないけどね……雰囲気は。

って……あれ……?
もしかしてまだ、発明されてないとか?





月が輝く夜。
――夢見が悪かっただけだった。

どんな夢かは起きた時には忘れてた。
ただ、ぼろぼろと涙が零れ落ちて止まらない。

もしかしたら、昼間のせいかもしれない。

セツリナカノ……お前は黒い未来の流れを変える渦となるだろう』

ヘブラスカが私にそんなことを告げるから。
私はなれない、未来の流れを変える渦にはならない。
全てじゃないけど先を知ってるから。

告げられたことが、まるで異分子だと言われているようで。
何故ここに来たのかと、厳しく詰問されたようで。
――私には分からなかった。

でも、帰りたくないと心のどこかで叫んでる。
まだ帰れないと、頭の片隅が警告を出してる。

それでも、ここにいていいのかと湧き上がってくる考え。
きっとそんな答えは、あるはずがないのに。

誰が私をここへ連れて来たんだろう?

「にゃあ……」
(ご主人様)
「……しら、ゆき」

ゆっくりと下を向くと、白雪が私のことを見上げてた。
この子もいなかった存在……私が創造した存在。
白雪がいるのは、私がここにいるからだ。

「にゃあ、にゃう……にゃあ!」
(泣かないで、泣かないで下さい……私がいますから!)
何を言おうとしてるの?
何を伝えようとしてるの?

「……ごめん……ごめんね……白雪」
「ふにゃあ!」
(謝らないで下さい!)
違うと、叫ぶように私の言葉を遮って鳴く白雪。
もどかしいのを押さえきれないのか、激しく翼を動かす。
4本のしっぽが、イライラと揺れている。
深い青の目は泣きそうな色をしてた。

「しら……白雪……」

返事はなく、揺れていたしっぽがしゅんと項垂れる。
ざらりとした感触が小さく頬を撫でた。
白雪を抱き締めると、頭を擦りつけてきた。

「にゃああ」
(私が存在理由になってみせます)
「大丈夫……もう大丈夫だから、白雪」
「にゃう」
(私はずっと一緒にいます)
「一緒にいるから……」

この子を初めて見た時から、どんな時でも命のない、
ただのゴーレムだとは思ったことはない。
出来るならばご主人様の心のより所になりたい。
私にとってセツリ様はただのご主人様ではないから。
私の白雪。
せめてものご恩返しを。




NEXT.

拍手[0回]

PR