『かっ、かいも~~~ん』
ズゴゴゴ……という重量感溢れる音とともに、門が少しずつ
上へ上へと開いていく。
『ほらほら皆、落ちついてよー。大丈夫大丈夫、あの人の紹介だから
ちゃんと人間だって。あ、今から迎えを行かせるから待っててね』
「了解でーす」
「うにゃああん」
ゴーレムに向かってひらひらと手を振ってると、後ろからとてつもない
殺気が向けられる。
振り向くと、神田がひどい目付きでものすっごく睨んでた。
あーあ。
神田って本当にこんな雰囲気が似合うよねー。
とっても怖いよー、その視線?
私はびしっ、と神田に指を突きつけた。
「問題です! “マリ”ーとつくお偉いは誰でしょう?」
たっぷり1分間。
「……。…………お前死ぬぞ」
「君たちがバラさなければノープロブレムッ!!」
答えに辿りついたのか、神田が眉をひそめる。
まあ、分かった君も同罪のような気がするけどね。
今度は呆れたような、信じられないというようなジト目で神田は
私のことを見やってくる。
「ねえ、名前は何ていうの? ちなみに教えてくれないとあだ名を
勝手につけて、勝手に大声で呼ぶからね」
「チッ! ……神田だ」
「神田も日本人でいいんだよね? 私は神田と同じく日本人の仲野雪里。
簡単にセツリでいいよ。こっちは私のゴーレムの白雪」
「ふにゃあ」
「ふん」
私が白雪を見下ろすと、ふわりっと軽々と私の肩へと飛んで来た。
神田は鼻を鳴らしてから、さっと六幻を腰に戻すとスタスタと
どこかへ行ってしまった。
うーん、もう少し話したかったのになー。
でもそこに、神田と入れ替わるようにして走ってきた黒髪の
女の子を見て私の気持ちは上昇した。
おお、とっても可愛い子だね!
可愛い女の子は好きだよ、和むから!!
「初めまして! 私はリナリー・リー。エクソシストで、室長助手よ。
これからよろしくね」
「こちらこそ初めまして、よろしくリナリー。私は仲野雪里、
セツリでいいよ。こっちは私のゴーレムの白雪ね」
ふと、リナリーは不思議そうに私の顔を覗き込んでくる。
内心微笑ましく思いながらも、きょとんとした表情を浮かべて
その顔を見てると、おもむろにリナリーはぽつりと言った。
「セツリ……、どうして男の子の格好をしてるの?」
私の来てる服はこの世界に来た時に着てた制服じゃなくて、
旅に出てから買った、黒と白がメインの洋服。
肩までの下ろした髪型と、ざっくばらんな口調。
おまけに私は、リナリーよりも身長が高い。
どこからどう見ても、女に見える要素はどこにもない。
それなのに、リナリーは私の姿を一目見ただけで、私が “女” で
あることにすぐ気がついた。
動きやすさ重視で胸にはしっかりとさらしが巻いてあるし、
着やすさ重視で着ているのも少し大きめの服にしてるから
ほぼ膨らみなんて分からない。
さすがリナリーだねー。
まあ、一応私は隠してるつもりなんてないんだけど。
「こっちの方が何かと動きやすいからね。こういう服なら、
あまり汚れも気にならないし……スカートは似合わないんだ」
「そうなの?」
ええ、そうなんですよ。
実際に私がリナリーみたいな、ほんとそれ膝上何センチあるんだっていう
ミニスカートなんて着たら、周りが引いちゃいます。
っていうか、私自身がそういう服とかを着たいっていう興味が
ぜんっぜんないのも理由なんだけどね。
従妹とか親友の方が似合う。
その後、リナリーに道すがら各フロアごとの説明をちらほら受けながら、
科学班の所のたどり着いた。
……つーか階段多すぎだろここ……。
NEXT.