「あー……、疲れた……」
私はそうげっそりと呟いて、白雪を地面に降ろす。
手の中のハリセンスをピアスに戻してから、両手を持ち上げて、
ぐうっと背伸びをしながら息をついた。
こんなに動いたのって、師匠の修行以来かもしれない。
まあ、今回の場合は主に避けてただけだけど。
旅するのに、立ち回りは必要ないしねー。
「……てっ! ……てめぇっ……!!」
神田は六幻を手にして、また私に切りかかってこようとする。
私は溜息一つついて、神田に向かって封筒を見せる。
「これ紹介状。コムイさんに会いたいんだけど」
「知るかっ!!」
「いや、知るかって言われても。こっちが困るよね、白雪」
「にゃあん」
うーん……こりゃしまったな。
手加減するのを忘れてて、遊び過ぎちゃったみたいだ。
ちょっと手合わせしてみたかった部分があるにしろ。
私は怒り狂う神田を前に、頬をかいた。
とりあえず怒り狂う神田はひとまず置いといて、ゴーレムを振り返り、
もう一度話しかけた。
「あのー、……やっぱり私の入城を許可出来ませんかね?」
「無視すんじゃねぇっ!!」
「はいはいちょっと待っててねーすぐ終わるからねー」
「……ッ! ……ッ!!」
このままだといずれ神田に殺される気がひっしひしとするんですけど。
かなり、殺気が膨れ上がってるんですけど。
許可が下りなくても、もう師匠の所には帰れないし。
さて……入城出来なかったらどうしようかなー。
師匠には怒られるかもしれないけど、フリーのエクソシストにでもなって
あちこちAKUMAの出そうなとこ回ってみたりするしかないかも。
すると、さっきとは違う声が聞こえてきた。
『誰からの紹介状だい?』
「マリーちゃん」
私はにっこりと笑って、即答で答える。
そうやって呼んだことが師匠にバレたりでもしたら、私は、
確実に やられる よね!
ふと相手が黙り込んだ。
そのすぐ後にポム、という手を打つ音が聞こえてきた。
そしてものすごく納得したような声が飛んでくる。
『あーあー、はいはいなるほどねー。そういうことか、分かったよ。
神田くーん! その子に攻撃するの止めてくれるかなー』
「ああ?」
不機嫌そうな神田の声。
ゴーレムから聞こえる小さなザワメキ。
アレで通じるなんてさすがだね!
……もしや、今の声の主はコムイ室長ですか?
どうやら入ることは出来そう?
NEXT.