その夜。
崩壊した町からでた私たちは、少し離れた場所にあったそんなに
深くない森の中で野宿をすることになった。
アレンは昼間の心労と疲れ、それに気力も使い果たしていたからか、
すでに私に寄りかかってすやすやと寝てる。
「……ん……」
「寒い? アレン」
もぞもぞと体を動かしたアレンに、もう少し私の毛布をよせかけて
頭を撫でてやる。
すると安心したのか、またすやすやと寝入ってしまった。
まったく、この子は寝顔も可愛いなッ!!
師匠はといえば、焚き火の向こう側でワインを飲んでる。
……どこからそのワインとグラスを取り出したんだ。
私は疑問に感じながらも、苦笑して訊いてみる。
「それにしても師匠、大丈夫なんですかー? いっきに弟子を2人も
持っちゃったりして」
師匠は一口、ワインを口にして静かに言った。
「――まるで、俺が今まで弟子を持ったことがないと知っているような
口ぶりだな」
辺りの明かりは焚き火だけ。
帽子の下の師匠の目は暗くて見えない。
けれど鋭く私の方を見てるだろう。
「そう聞こえました?」
私はくすくすと笑って聞き返す。
しばらく沈黙が流れた後で、師匠はふっと息を吐いた。
「……いや」
「そうですか」
「ああ。――お前も飲むか?」
「私、一応未成年ですよ、師匠」
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