忍者ブログ

黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

第1章 台風4号 無茶な師匠と滅茶な弟子(1)





私は少し憮然としながらも、しゃがみこんで静かに少年に話しかける
師匠の言葉を黙って聞く。

何でこの少年には問い掛けるように聞いてるのに、私には上から目線の
命令口調だったんですか?
まったくクロス師匠め……その差は何だったんだ。
そうか可愛さか。
それなら仕方ない。


ゆっくりと少年が顔を上げて、師匠の顔を見た。
私はそこで初めて二人の傍に歩き寄って、少年をひょいっと姫抱っこした。

「……おい……」 
「ほらほら師匠、まずはこの子の手当てが最優先でしょーが? まったく、
 本当に気がきかない師匠なんですからー」
「テメェな」

木の根本に少年を座らせると、腰につけてたポーチの中から色々と
必要なものを取り出す。
このポーチも実は叔父さんから誕生日プレゼントで貰ったもので、
わりと小さいコンパクトな見た目なのに、絶対に入らなさそうなモノが
次々と入ってくれるのでとっても便利なんだよね!

手のひらサイズのペットボトルの水で少しだけハンカチを濡らして、
少年の顔についた土や血の汚れを拭う。
次に応急手当セットのピンセットで摘んだ脱脂綿に、液体の消毒薬をつけて
頬に触れる。
すると、少年が痛みにびくっと身を竦ませた。

「……っ……!」
「染みるだろうけど、ちょっと我慢しててね」

私の言葉に、少年は少しだけ顔をしかめつつも、声を上げるのを我慢して
素直にじっとしている。
うん、いい子だいい子だ♪
……放心してて状況がよく分かってないのもあるんだろうけど。

消毒し終えてピンセットをしまったあと、適当な大きさにガーゼを整えて
少年の頬にはっつける。
仕上げに、切れた口はしに絆創膏を張って終わり。

「はい、終わり。我慢出来て、えらいえらい」
「……ほう……やけに手際がいいんだな? 不器用そうに見えるが。
 何でそんなモノを常時持ち歩いているんだ、お前は」

ポーチに出したものをしまってると、師匠がちょっと感心したように
問いかけてくる。
いつのまにか、後ろから私の手元を覗き込んでいたらしい。
私は肩をすくめてみせた。

「残念でした、私は器用な方なんです。それに手際がよくても当たり前です。
 こういうのって、物心ついた時から色々と叩き込まれてたんですよね。
  “知っておくべきことだから” って。……まあ、確かに実用的じゃないのが
 多かったと思いますが」

師匠にそう返してから、私は少年の頭を軽く撫でる。
少し驚いたように、少年は目を丸くした。
私はそれに喉で笑ってみせると、もう一度少年を腕に抱き抱えた。
さっきも想ったけど思ってたより軽い。

くくく、この子の姫抱っこは私が貰ったぜ。

「名前なんて言うの? 私は仲野雪里雪里でいいよ」
「……、……」
「ん? ごめん、聞こえなかった」

少年がぽつりと口を動かす。
けれど声が聞こえてこなくて、私は笑って顔を覗き込む。
じっと、私の顔を見た後で小さく答えた。

「……アレン。……アレン・ウォーカー……」
「アレンか。今日からよろしくね」


師匠そっちのけで、アレンに笑いかけました☆



「お前、そんな名前なのか」
「ちなみに私も、師匠の名前教えてもらってませんよ」





NEXT.

拍手[0回]

PR