役目を終えた左手は、元に戻る。
凍りつくような寂静が辺りを包み込んでいく。
残されたのはボロボロに傷ついた心と、惨劇のショックで雪のように
白くなってしまった髪と。
額に深く刻まれたペンタクルから左目にかけての、痛々しい呪いの傷跡。
少年は放心したように座り込み、呆然と涙を流す。
声も上げずに、ただただ静かな涙を零す。
師匠が静かに近寄って、少年の前に膝をついた。
「 AKUMA に内臓された魂に自由はない。永遠に拘束され伯爵の兵器……
オモチャになるのだ。破壊するしか救う手は無い」
じっと少年を見下ろして、師匠は言葉を続ける。
まるで師匠の声すら聞こえていないように少年は微塵にも動かず、
ぴくりとも顔も上げない。
瞳に映るものさえ見えないように。
「……生まれながらに対アクマ武器を宿した人間か……数奇な運命だな」
師匠は少年を見下ろしたまま。
少年はまったく動かないまま。
「お前もまた神に取り付かれた使徒のようだ。エクソシストにならないか?」
その時、初めて。
少年の顔がぴくりと小さく動く。
ゆっくり……ゆっくりと師匠の顔を仰ぎ見た。
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