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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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第1章 台風3号 エクソシスト(2)





「じゃあ来い」

師匠はくるっと方向転換すると、スタスタ歩き始める。
……っていうか、結局ここってどこなんだ……。 
私はさっさと歩き始めるクロス師匠の後を足早に追いつつも、
ようやくそのことを思い出した。

聞いてみようと口を開いて―――



『ギャアアアアアア!!!』
 
 
 
いきなり耳をつんざくほどの大きな苦痛の悲鳴が、師匠の歩いていた
方向から飛んできた。
びっくりして立ち止まった私も、思わず叫ぶ。

「なっ、何!?」
「…… AKUMA の声だ」

師匠は冷静に私に言う。
そして、今度は少し足早に歩き始めた。
改めて思い知らされる外国人と日本人のコンパスの差を少し恨めしく
思いながら、私はまたせっせとその後を追っていく。

見えてきたのは、町はずれの墓地。

「………………?」

私は頭に引っ掛かるモノを感じながら、ぴたりと足を止めた
師匠の隣から顔を覗かせてみた。



「マナ…!? やめろ、マナを……っ!!」

十字架を宿す奇怪な左手が地を張う。

それはただ、己の使命を果たすかのように―――。

まだ身代わりになるヒトの皮を被ってはいない、下半身を粉砕されて
動けなくなった骨組みの AKUMA へ向かう。

それはただ、己の信念を貫くかのように―――。

その手に引きずられる少年が泣き叫ぶ。

自分の心が愛する者を失望させてしまったと。
自分の手が愛する者を壊す姿を見たくなくて。

それはまだ、彼と一つにはなっていない―――。



これは……まさか……。
この状況は……!!
私は愕然として、声もなく立ち尽くす。

「背けるなよ」

クロス師匠の強い言葉が降ってくる。

背けるとは、何からだろう。
目の前の凄惨な場面からだろうか。
子供の激しい痛みからだろうか。
壊すモノと、壊されるモノの現実だろうか。

始まっている戦争の一端からだろうか。



「逃げて……! 逃げて父さん!!」

泣き叫ぶ少年。
左手は距離を縮めていく。
AKUMA は慈愛に満ちた声を出した。

『アレン……お前を……愛しているぞ……』

次に発せられるコトバ。
それは、その子にとって最も辛いコトバ。

『 壊 し て く れ 』



「あああああああ!!!!!」
 
 
 
それはいま、確実に運命を回し始めた―――。





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