「D.グレ~♪ D.グレ~♪ はあーっはははははは☆」
何だかもう頭が逝っちゃってるような、大きな笑い声が辺りに響く。
場所は商店街――道行く人々はさっと目線を背ける。
『まあ、何て常識のない。奥さん見まして?』
『ママー、あれなにー?』
『しっ! 駄目よヒロくん。見ちゃ行けません!』
『もうすぐ春だからなあ……』
『見ないフリ、見ないフリっと』
ひそひそこそこそ、周囲で言葉が交わされる。
だが高笑いを上げている人物は聞こえなかったらしい。
実のところは聞こえたけど、そこはあえて無視した。
その人物……というか、私の名前は 『仲野 雪里』 。
ぴっちぴち、は死語だとしても、うら若き16歳☆の高1である!!
白のシャツと黒のネクタイとズボンは、高校の制服。
タキシードなら正体不明の変態執事になれるのに。
ああ、何てもったいない……。
髪はショートより少し長めで黒、日本人なので瞳も黒い。
両耳には、小さいシンプルな白いピアスをつけてる。
手にはだーいじなだーいじなご本様。
そう!!
今日は待ちに待った D.Gray-may の最新巻発売日!
あー D.グレの世界に行ってエクソシストになりたいなー!
アレンぐりぐりしたい~。
弟気質っぽそうだけど、あの子は絶対に黒いよね!!
神田からかいたい~。
会えるならばユウって呼んでやる☆
ラビで遊びたい~。
バンダナ奪って髪を下ろしたい!
リナリー抱き締めたい~。
あははは、コムイが半狂乱になること間違いナシ!
コムイ起こしてみたい~。
もちろん、私とリナリーが結婚しちゃうぞ! って。
想像が楽しすぎて、顔がにやけて戻らない。
さあさあさあ、早く家に帰ってじっくり読ーむーぞーっ!!
るんるんとスキップを踏みながら家路を辿っていく。
だけど。
私はふとその足を止めた。
NEXT.