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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

7月・ハリポタ夏祭り 第6弾・蛇親子編


※夏祭り企画で書いた『蛇親子』。




つい最近まで軽くご機嫌斜めだった様子とはガラリと変わり、
鼻歌でも歌いそうなほど気分が浮上している。
ホグワーツが夏休みに入り、大好きな父親が帰ってきたいるのだ。
今は研究材料を買いに外に出ている。
にこにこと夕飯のオムライスを頬張る姿を見て、レギュラスも
思わずつられて笑みを浮かべてしまう。

誰かにつられて笑うなど、生前では考えられなかった行為だと
今の自分自身を少しだけ不可思議に感じる。
それでも、この瞬間を嫌であると感じないことを、レギュラスは
心穏やかに受け入れられていた。
その感情も幼子によって引き戻されたのだから。

『ハリー、口元にご飯粒がついてますよ』
「どこ?」
『ほら、ここですよ』
「うん」

 
口元を拭うと、ハリーはまたオムライスを食べ始める。
レギュラスの作る料理は、どれもこれもハリーの大好物だった。
今食べているオムライスも、バターで焼いたとろとろの半熟玉子に、
チキンの入ったケチャップライス、ソースはデミグラスソースを
ベースにした少し甘めのソース。
父親の作る料理も大好きだが、レギュラスの料理も格別だ。

実際、偏食気味のセブルスも、味にこだわるシリウスであっても、
レギュラスの料理だけは残さない。
その事実には、レギュラスもハリーもまったく気がついていないが。

ハリーはオムライスを食べ終え、デザートのプリンを食べる。
すると、玄関の方からドアの開く音がした。
足音のあとにリビングのドアが軽く開き、いくつかの荷物を持った
セブルスが入ってくる。

「とうさま! おかえりなさい!」
『先輩、お帰りなさい』
「ただいま」

2人に言葉を返し、セブルスは部屋に荷物を置きに行く。
ハリーがプリンを食べ終わった頃にリビングへ戻ってきたセブルスの
腕には、何故か荷物がひとつ残っている。
少し首を傾げたレギュラスが、セブルスに問いかける。

『先輩、それは……?』
「ああ……。知り合いに貰ったのだが、お前たちに土産だ」
『お土産……ですか……?』

きょとんとするレギュラスに、目を輝かせるハリー。
セブルスに誘われ、外に繋がっているテラスへと移動する。
そしてセブルスが抱えていた荷物の中身を取り出し始めると、
覗き込んでいたハリーはもっと顔を輝かせた。

「はなびだ!」
『花火……これがですか?』

はしゃぐハリーの言葉に、レギュラスが首を傾げる。
レギュラスが想像出来る花火と言えば、クィディッチの対抗試合で
上がっていたものか、学年末の修了式で上がっていたものだけ。
音と煙の出るぐらいのものしか知らなかった。
しかしセブルスが取り出したのは、杖よりも細長い棒のようなもの。
他にも紐状のものや、筒状のもの、玉状のものだったり数が多い。
レギュラスの困惑を見て取ったのだろうセブルスは、ハリーの手に
1本の花火を持たせて、さっと火をつける。

シュワッと音を立てて吹き出る花火に、レギュラスは驚いた。

「いわゆる、おもちゃ花火というものだ。子供でも簡単に遊べる花火で、
 空に打ち上げる花火とはまた違うものだな」
「みてみて、にいさま! はなびきれい!!」

ハリーの手に持つ花火は、赤や黄色、青色や紫に色を変えていく。
まるでセブルスやレギュラスと同じく、自分も魔法を使っている気分に
なっているらしいハリーは、危なくない程度にゆらゆらと花火の先を
揺らして遊んでいる。

『……これは?』

ふと、レギュラスは小さな花火を見つける。
他の花火よりも細い紐状になったもので、今にも切れてしまいそうだ。

「あ、にいさま! それ、せんこうはなびっていうの!」
『線香……花火、ですか?』
「うん! にいさまもいっしょにやろー!」
『あ、ハリー……』

手渡された花火に戸惑うレギュラスをよそに、ハリーはセブルスに頼んで
さっさと火をつけてしまった。

「レギュラス、動くと火が落ちるぞ」
『え、ええっと……?』

セブルスにからかうように言われて、レギュラスは動きを止める。
先端に火花を散らす線香花火は、先ほどハリーが遊んでいた色鮮やかな
花火よりは地味に見えてしまっているのだが、その分、とても繊細な
花火に思えた。

ちらりと隣を見れば、ハリーが楽しそうに花火を見つめている。
そっと後ろを見やれば、セブルスが満足げに立っている。

そして手元の花火に目を落とすレギュラス。

考えもしなかったこの有様に、小さな笑みをこぼす。
レギュラスは小さく静かに――穏やかな時間が崩れないようにと、
ただ、心のうちで願わずにはいられなかった。

その瞬間、すうっと火の消える花火。
あまりのあっけなさに、目を瞬いたレギュラスは苦笑してしまう。

「あー! にいさま、すごい!!」
『えっ?』
「せんこうはなび、さいごまでおちないの、すごい! にいさま!
 あのね、せんこうはなびって、さいごまでおちなかったら、
 おねがいごとがかなうんだよ!」
『願いごとが……』
「よかったね、にいさま!!」

あまりの純粋な笑顔に、レギュラスは素直に頷く。
穏やかな時間を、この大切な存在を――きっと守ってみせる。
レギュラスは火の消えた線香花火を見つめ、改めて誓った。





END.

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