一つ、二つ、三つ……。
飲み込まれては、大きくなり近づき。
目を閉じて……。
いや、そうしなくても分かる “世界の振動” 。
普通であるならばまったく感じることが
出来ないそれは、己の魂の問題。
フェルはソレに気づくだけの “魂” を持ってる。
そして、寝込んでしまった小さな少女も。
「おじ……さ……」
「雪里、熱が下がらないようだから、起きては駄目だよ」
「ん……」
ぼうっとした目は涙で潤んでいる。
子供の器と未熟な精神では “魂” のコントロールは出来ない。
それはある力を秘めている、雪里も同じだ。
ただでさえ不安定だというのに、力の威力は絶大。
時間をかけてコントロールする術。
それを教えているのはフェルだ。
何気ない教育の中に全てを隠して。
自分や他人を護る術、急な事態の対処や打開方、
様々な物事に対する心構えなど。
――それでも子供は子供だ。
純粋ながらも、大人びるしかなかった子供。
「おじさ……おにいちゃんたちと、おねえちゃんたち……
みんな、だいじょうぶ、かなあ……?」
何が起こっているのか。
雪里にはきちんと、理解できていないだろう。
それでも、自分の大好きな人たちが大変なことに
陥っているであろうことは嫌でも分かる。
行きたいのに行けない悔しさが、瞳の奥で揺らいでいる。
だが、決して表には出さない子供。
「大丈夫。露鬼君たちならまた遊びにきてくれるよ」
「うん……そうだよね……」
“傍観” するしかない自分と。
“干渉” を許された子供と。
一体、どちらが幾多の世界は優しいのだろうかと。
思わず心の中でフェルは “彼” に、
残酷だといっても過言ではない問いかけをした。
NEXT.