ふわり、と消えていく姿に、雪里は小さく手を振る。
すると驚いた表情をした少女は目に涙を浮かべ、
最期は嬉しそうに、にっこりと笑った。
「……おにいちゃんは、たすけびと?」
「たすけびと?」
近寄ってくる雪里に、男性はしゃがんで首を傾げる。
「おじさんが “ゆうれい” や “あやかし” を
たすけてあげるひとは、そういうんだよって」
「俺はたすけびとじゃなくて、ただのカウンセラーだよ。
風宮蓮っていうんだ。……視えるんだね」
「うん。いっしょにあそんでたんだよ、せつりと」
頭に直接聞こえるような声に雪里は頷く。
優しくその頭を蓮が撫でると、小さく雪里は微笑む。
それは、嬉しいとも悲しいともとれるもので。
静かに蓮は撫で続けた。
「ゆりおねえちゃん、ともだちいなかったってないてた」
「俺にもね、たくさん雪里ちゃんのことを話してくれたよ。
妹みたいですごく可愛いんだって言ってた」
「せつりがともだちになってもいい? ってきいたら、
わらってくれたの」
「すごく楽しかったって言ってたよ……だから」
蓮が目を細めた。
「 “雪里ちゃんに危ないことしたくない” って」
「……しってたよ、せつり……しってたよ?」
ぎゅうっと手を握りしめるだけの雪里に、
蓮は少し驚きをあらわにした。
真実、雪里が心からそれを理解していたからだ。
その気はなくても。
ふとした瞬間に力が溢れてしまえば。
“自縛霊” が “生人” を傷つけてしまうことを。
小さな子供は、何故かそれを確かに理解している。
その心ではとても重過ぎるだろうに。
「……れんおにいちゃんは、やっぱり、たすけびとだね」
「そうかな?」
こくり、と頷く雪里。
「ゆりおねえちゃんがわらってて、せつりもすごく
うれしいから、れんおにいちゃんはたすけびとだよ」
にっこりと心から浮かべる雪里に、蓮も嬉しそうに微笑んだ。
先程、ゆっくりと成仏していった少女が最期に
浮かべた笑みをふと思い出す。
安らかな、本当の救いを得られた笑み。
手を振って公園を出て行く姿に、蓮はゆっくり立ち上がる。
この近くにある書本・文具店の子供らしい。
「……後で時間とれたら、行ってみようかな……」
NEXT.