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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

傍観の円舞曲-ワルツ- 第17曲



 

ふわり、と消えていく姿に、雪里は小さく手を振る。
すると驚いた表情をした少女は目に涙を浮かべ、
最期は嬉しそうに、にっこりと笑った。

「……おにいちゃんは、たすけびと?」
「たすけびと?」

近寄ってくる雪里に、男性はしゃがんで首を傾げる。

「おじさんが “ゆうれい” や “あやかし” を
 たすけてあげるひとは、そういうんだよって」
「俺はたすけびとじゃなくて、ただのカウンセラーだよ。
 風宮蓮っていうんだ。……視えるんだね」
「うん。いっしょにあそんでたんだよ、せつりと」

頭に直接聞こえるような声に雪里は頷く。
優しくその頭を蓮が撫でると、小さく雪里は微笑む。
それは、嬉しいとも悲しいともとれるもので。
静かに蓮は撫で続けた。

「ゆりおねえちゃん、ともだちいなかったってないてた」
「俺にもね、たくさん雪里ちゃんのことを話してくれたよ。
 妹みたいですごく可愛いんだって言ってた」
「せつりがともだちになってもいい? ってきいたら、
 わらってくれたの」
「すごく楽しかったって言ってたよ……だから」



蓮が目を細めた。



「 “雪里ちゃんに危ないことしたくない” って」
「……しってたよ、せつり……しってたよ?」

ぎゅうっと手を握りしめるだけの雪里に、
蓮は少し驚きをあらわにした。
真実、雪里が心からそれを理解していたからだ。

その気はなくても。
ふとした瞬間に力が溢れてしまえば。

“自縛霊” が “生人” を傷つけてしまうことを。

小さな子供は、何故かそれを確かに理解している。
その心ではとても重過ぎるだろうに。

「……れんおにいちゃんは、やっぱり、たすけびとだね」
「そうかな?」

こくり、と頷く雪里。

「ゆりおねえちゃんがわらってて、せつりもすごく
 うれしいから、れんおにいちゃんはたすけびとだよ」

にっこりと心から浮かべる雪里に、蓮も嬉しそうに微笑んだ。
先程、ゆっくりと成仏していった少女が最期に
浮かべた笑みをふと思い出す。

安らかな、本当の救いを得られた笑み。

手を振って公園を出て行く姿に、蓮はゆっくり立ち上がる。
この近くにある書本・文具店の子供らしい。

「……後で時間とれたら、行ってみようかな……」





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