ぷわ、ぷわ
風にのって飛んできたそれを、雪里は追いかける。
それは子供心をとてもくすぐるもので、雪里も例外ではない。
飛んでくる方向へ走っていく。
すると、ひと気のない公園に辿りつく。
長身の男が一人、奥のベンチに座っている。
男の片手に握られるのは、硬質で力強い存在感。
走りよってくる雪里に男は気づく。
ゆっくり片手を挙げて、男は握るそれを雪里に突きつける。
それは、漆黒の拳銃。
雪里は目を見開き――
男はためらいもなくトリガーを引いた。
ぷわわわわわわわわっ!
銃口から一気に放たれる、虹色の泡。
まあるく濡れた泡玉は、雪里の顔の横をすれ違う。
ぱっと顔を輝かせる雪里に男は目を細める。
風にのったシャボン玉は空を舞う。
男は少し考えるようにする。
そしてもう片方の手をコートのポケットに入れ、出す。
ぽん、と雪里の手に置いたのは小さなピンクの容器とストロー。
きょとんとした雪里。
けれど次の瞬間、満面の笑みを浮かべた。
「あっ、見つけましたー」
「……お前……遅いぞ。仕事は終わった」
「ええ!? あ、ホントに何もないですねえ」
「すみません。お疲れ様でした」
「おう。悪いな、コイツの世話させて」
「大丈夫ですよ」
「お世話? 何のお話ですか?」
「……何でもありません」
「気にすんな」
「?」
「帰るぞ、ナモナキ、キマグレ。シルべにどやされる」
「まま待って下さいー! サトリさーん!」
NEXT.