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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

傍観の円舞曲-ワルツ- 第12曲



 

目の前には、小さな小さな子供。
特に目立つような子供ではないけれど、
それはそれは美しく珍しい “モノ” を持っている。

ああ、求めていたものは――。



『 海にたゆとう気はあるか……? 』

びくん、と己の中の何かが震えた。
己が王に力を突きつけられた時よりも。
それは遥かに遥かに。

『 汝、深海の安らぎを知る気はあるか……? 』

声が出ない。
束縛されている。

『 ……永久の時を知る気がなくば――去れ 』

解放される。
目の前のモノを手に入れたい。
けれど、今は逃げなければ。

あの声より逃げなければ!!





「……きえちゃった……?」
「その方がいい」

ぽつりと呟く雪里の頭に、優しく手が乗せられる。
長い黒髪を高く一つに結った男性が、
いつのまにか雪里の後ろで肩膝をついていた。
微笑みは慈しみと哀しみを含んでいる。

「どうして?」
「でなければ奪われてしまっていたよ」
「せつりからなにをとるの?」

男性は目を細めて、重そうに口を開いた。

「ひとの、大切なものを」

そしてもう一度だけ雪里の頭を撫でると、
ゆっくりと立ち上がり、男性は歩いていってしまった。

その姿が見えなくなった後で、角から青年が姿を現す。
男性が消えた方をちらりと見て小さく嘆息した。

思わず隠れてしまうとは、らしくもない。
だが、それも仕方がないことだ。

“私” は反抗しているのだから。

「……まさか来るとは思わなかったけれどね……」
「あ、おじさん」

フェルは微笑んだ。

「さあ、早く 『IN・YOU』 に行こうか」





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