夜、ふと目を覚ました。
自分のベッドで寝ているのは、小さな名付け子。
ソファで読書中にいつのまにか寝てしまった身体は、
所々かたくなり痛みを持っていた。
気がつけば寝ていることに慣れたのは、
いつ頃だったか。
……慣れたというより、あきらめたのか。
胸元で揺れる、銀の鳥を指先で撫でる。
鳥が抱く紅の丸玉。
その名は人により呼び名が代わる。
私はこの石の呼び名を持たない。
持つ必要がなかった。
これは呼ばれる程の完成さは持たない。
あれば、また私は違う道にいたのだろうか。
こんなことを、考えずにいたのだろうか。
誰にも出会おうとせず。
ぼんやりした霧の向こうで彼が話している。
濃霧は私の心がつくりあげた、人との境界線。
彼は、凍てつく私に話しかけた。
届いても届かなくてもいいというように。
水のように流れた言葉。
脳に届いて、心に届かなかった言葉。
けれど、私はどこかであがきたくなったのだろう。
だからここまで歩いたのかもしれない。
彼らに会うためだけに、少しだけあがいた。
あの時のことは、これからも鮮明だけれど。
でも今は少し楽しいと思えるから。
でも今は少し “私” に反抗してみたいから。
あの子に生きる術を与えながら。
手紙でも書いてみよう。
『我が親友 パラケルススへ』
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