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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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傍観の円舞曲-ワルツ- 第11曲



 

夜、ふと目を覚ました。
自分のベッドで寝ているのは、小さな名付け子。
ソファで読書中にいつのまにか寝てしまった身体は、
所々かたくなり痛みを持っていた。
気がつけば寝ていることに慣れたのは、
いつ頃だったか。

……慣れたというより、あきらめたのか。



胸元で揺れる、銀の鳥を指先で撫でる。



鳥が抱く紅の丸玉。
その名は人により呼び名が代わる。
私はこの石の呼び名を持たない。
持つ必要がなかった。

これは呼ばれる程の完成さは持たない。
あれば、また私は違う道にいたのだろうか。
こんなことを、考えずにいたのだろうか。



誰にも出会おうとせず。



ぼんやりした霧の向こうで彼が話している。
濃霧は私の心がつくりあげた、人との境界線。

彼は、凍てつく私に話しかけた。
届いても届かなくてもいいというように。

水のように流れた言葉。
脳に届いて、心に届かなかった言葉。
けれど、私はどこかであがきたくなったのだろう。

だからここまで歩いたのかもしれない。
彼らに会うためだけに、少しだけあがいた。



あの時のことは、これからも鮮明だけれど。



でも今は少し楽しいと思えるから。
でも今は少し “私” に反抗してみたいから。
あの子に生きる術を与えながら。

手紙でも書いてみよう。





『我が親友 パラケルススへ』





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