ぺしっ。
「もっと腰入れてみ」
ぱしっ。
「そうそう、手首きかせて」
部屋の中で響く、軽い音とアドバイスの声。
雪里が振っているのは小さなハリセン。
教えているのは、同じくハリセンを持った露鬼。
店のカウンターでくすくすと笑うのはフェル。
止めていた羽根ペンを動かして、最後の一文を書く。
紙を折り、封をすると隅に “Crown” と一言示した。
カランカラン……
「こんにちは」
「いらっしゃいませ。今日はお一人で?」
フェルが問うと青年は苦笑した。
「はい」
「せっかく徹君のために用意しておいたんですが……」
トン、とファ●゛リーズ (ラベンダー) をカウンターに置いた。
青年はそれを見てどこか微妙な顔をする。
そしてやおら真剣な顔になると、フェルに詰め寄った。
「フェルさん」
「はい、何でしょうか。正義君?」
「……お願いがあります」
「はい」
「四次元ポケット灰皿創って下さい!!」
「いいですよ」
フェルが快く頷くと、正義は何度も何度も礼を言う。
そしてとても必死な面持ちで帰っていった。
徹のヘビースモーカーぶりには、いくら正義でも
耐え切れない部分があるのだろう。
すぱんっ。
店の中にまた軽い音が聞こえた。
NEXT.