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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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第一話

 
 


「それぐらいにしておけよ」

俺は朗々と声を上げた。

一応女性の影はあるものの、一斉に俺の方を振り向く
盗賊どもに隠れて顔は見えない。

まあ、ちょっと見てた限りじゃあ一人旅っぽいし、腕前には結構
自信があるんだろ。
何せ強面の盗賊どもに四方を囲まれているにも関わらず、
怖がる様子なんて微塵もなかった。
これが戦ったこともない、まったく普通の女なんだったら
悲鳴を上げたり、すぐ泣いてるだろうしな。

「お前らじゃ何人いても話にならないぜ。すぐにシッポまいて
 逃げれば、命だけは助けてやるよ」


盗賊どもが逃げ帰る先にあるのは、もちろんアジトだ。
これで今日もほくほくの路銀……いやいや、今日の善行として
財宝の保管が出来るも当然だな。


「やかましいっ!いきなり出てきやがって……てめえ、何もんだ!!」
「お前らなんぞに名乗る名前はないっ!」

そうそうこれこれ!!
一度でいいから、こういうのやってみたかったんだよなー。

誰かが、こういう場合は女性のピンチに決まって脈絡なく現れる、
結構強くてカッコイイ謎の旅人っての?
安っぽい物語のワンシーンみたいな、アレ。
人が言うのを聞けば寒くなるだけの台詞とかな。

俺が言うのはともかく、俺に対してそういうのを言われたら、
目を点にするどころか大爆笑するだろうけどさ。

本当に一度だけな、一度だけ。
俺だってこういうことを、そう何度もやる気は毛頭ないし。
ってか、寒い人間になりたくもないしな。
どっかの金魚のフンみたいな感じのはごめんだ。

「しゃらくせえ!!やっちまえっ、野郎ども!!」
「ファイヤー・ボール」



ちゅどごむっ!!



「……あ……」

地面に転がってぴくぴくしてる焦げつく盗賊どもを見下ろし、
俺はポリポリ頬をかいた。

……あいやー、しまった。
いつもどーりに、ついつい一撃で沈めちまったな。
俺としては、もうちょっと焦らして焦らして、ちょちょっとかるーく
チャンバラをするような感じで遊んでやろうと思ってたのに。

つーかもしかして、こいつらもう立ち上がれないんじゃ?

やっちまった、アジトの場所が分からないじゃん!!
まあ、とりあえず昨日の保管分があるから、当分の路銀には
困らないっちゃ困らないけど。

うーむ……。
何かこう、もったいない気がする。

「……あの……」
「ん?」


おそるおそる遠慮がちな声がかけられて、俺は絡まれてた
女性の存在をようやく思い出した。

くるり、と振り向いた俺は――しばし絶句した。

さらりと風に流れる絹糸みたいな、輝く金の長髪。
澄んだ天空を思わせる、大きな青い瞳。
少女と女性のちょうど中間ぐらいの、愛らしく美しくも整う顔立ち。
いかにも保護欲だの母性本能だのがくすぐられるような、
ちょっと小柄で華奢な体躯。

――こういう場面で助けるにはありがちな、かなりの美少女だった。

今まで旅の途中に、結構色んな奴と知り合った俺ではあるが、
ここまでの美少女は初めて見た。
本当にそんな人間って世の中にいたのかとすら、ちょっと真面目に
思ってしまうほどである。

だが、その格好は鎧と長剣を装備している剣士だ。
俺の目端に映る長剣は、美少女が持つには無骨なデザイン。
でも腰に下げる姿は、かなり自然。

ということは、持ちなれてるってことで。

「あの、本当にありがとうございました」
「……やー、別に改まって礼を言われるほどじゃないって」

何せ俺がこの美少女を助けるに至った大元の理由というものが、
“ちょっと寒い登場シーンをやってみたかった” ってのと、
“盗賊どもの財宝の保管” だったし……。

それに、別に俺が助けなくっても、あの様子だったら多分
大丈夫だったろーしさ。

「それより怪我はない?」
「はい」

ないことは分かってるものの、一応流れ的に訊いてみる。
すると美少女はこくりと頷いた。

……さて?

俺がやってみたかった寒い物語のオーソドックスから言えば、
ここで俺とこの美少女の二人は恋に落ちるんだが……。

恋愛ごとよりも、何より財宝を魅力に思う俺。
ま、オーソドックスに関係のないことだな。





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