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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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恐怖





「なあ、面白いと思わねーか」


顔を向ければソファにごろりと仰向けに寝転がる姿。
頭には気に入っているらしいクッション。
目は閉じられていて、口元に皮肉るような笑み。


「誰もがいずれ死ぬってのにさ、何でそんな怖いんだろうな」
「その先に何が待っているか分からないからでは?」
「だから怖いって?」


目は静かに閉じられたまま。
口元は笑みを浮かべたまま。
手は胴の上で組まれたまま。

それで呼吸をしていなかったら。
それで白装束をまとっていたら。

その姿は。


「馬鹿だよな? そんなの考える必要はねぇんだよ」
「何故?」


問えば皮肉った笑みがふと大きくなる。
あったりまえだろ、と呟かれる。





「 “死” の後は何かを感じる事が出来ない」





目はやはり閉じたまま。


「奴らが怖いのは “死” じゃねぇんだ」
「……死の、 “瞬間” か」
「死が怖いとか抜かしてる奴らは死ぬまでの “行程”
 “過程” が怖いのさ。それを “死” が怖いってのと
 勘違いしてやがる」
「……同じじゃ、ないのか」
「同じ? 馬鹿言え」


目は閉じられたまま。
皮肉った笑みが、すうっと消える。


「どこが同じなんだよ。奴らは “生” の崖を歩き続けることが
 怖いだけだ。 “死” なんかこれっぽっちも考えちゃいない、
 だからしがみつく」


組まれていた手が離れ、右腕が虚空へ上がる。
何かを掴もうとするように掌を開いて。
何かに掴まれることを望むかのように。


「あいつらが怖いのは死じゃない、生の崖なんだ。
 いつ足を踏み外すか分からないと。あいつらは知らないんだ。
 自らその崖から堕ちるやつを、自ら……っ!!


伸ばされた手を握ると、荒がろうとした声が止まる。
見おろしてみれば、苦渋に満ちた表情がある。
目はしっかりと閉じられたまま。
言葉の消えた口は、血が滲みそうなくらい唇を噛んでいる。
そっと額を撫でてやれば強張った肩の力が抜けた。

ゆっくりと開く目。


「……おかしい……だろ」
「ああ、そうだな」





END.

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