「一番自分に傷がつかない方法は、何だと思う」
「相手ではなく自分にかい?」
「当たり前だろ」
「どうして?」
「そいつが何に傷つくかなんて、本当の所は分かりゃしねぇんだよ」
「……なるほど?」
「本心隠して選んで話してんなら、上辺だけの軽いオコトバだ」
「そうかい」
「嫌な言葉だって受け止める覚悟がありゃ傷なんてつかねぇ」
「覚悟がなければ傷がつく」
「覚悟がねぇから上辺しか話せねぇんだよ」
「弱いから?」
「保身だよ」
「……覚悟がある人と、ない人では?」
「問題はそこだ」
「つまり……考え方の相違」
「覚悟が跳ね返ってくるだなんて、そいつの甘えだ」
「甘え」
「そいつの覚悟も聞かず、自分の覚悟だけ投げつけてんだぜ」
「……何も知らない相手に」
「盾を準備する暇もないまま、矛が貫いてくる」
「傷がつくね」
「それなら、どうすればいいんだ」
「どうすれば」
「どうすれば自分に傷がつかない? どうすれば自分を守れる?」
「難しいね」
「傷をつけられる前に、傷をつけちまえばいい」
「それは――」
「常に相手を威嚇してやればいい、これ以上の傷をつけたくなければ」
「――覚悟をしろと?」
「逃げろと」
「いつにもまして……極端な結論だね」
「そうでもないだろ、こんな簡単な思考は誰でも持ってる」
「そうかな」
「それを見せないように上手く隠してる」
「相手がそれを知って――」
「自分に傷がつかないように」
「……可哀想だよ」
「お前ならそう言うだろうとは思ったが、一人なら傷はつかない」
「一人は、孤独だ」
「それで傷がつくなら、ただの自傷行為だな」
「己が己を――」
「それを他人だと錯覚してる奴は、自分自身の決着さえつけられない」
「……一人だから答えがでない」
「傷に怯える奴なら、答えなんか知らなくてもいい」
「答えを」
「どうせ覚悟からは、傷からは、自傷からは、逃れられない」
「そんなことは――」
「傷をつけ返す奴がいなくなりゃ、あとは自傷だけさ」
END.