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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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円環



 

僕は時折、胸を掻きむしりたくなります」

「何で」

「蟠っている燻りをどうにかしたくなるんです」

「ふーん」

「燻りが胸の奥から全身に巡るような感覚があります」

「へえ」

「最初は手足に巡って、そして脳に届きます」

「そうか」

「脳に到達すると、自分の意義を問い始めます」

「意義ねえ」

「自分の在り方を見失い、居場所をも疑い始めます」

「意味ねえ」

「誰も責めはしないけれど、ここにいていいのだろうかと」

「意地ねえ」

「どこへ向かうのか、なにをしたいのか分からなくなります」

「意思ねえ」

「そこからは自分自身をも見失い始めます」

「だろうよ」

「見失いかけたものを取り戻そうとして傷をつけます」

「ほう」

「痛みで少しずつ自分が戻ってくるのです」

「錯覚だな」

「ええ、錯覚です。本当は最初からそこに在るのですから」

「弱いな」

「ええ、弱いです。本当は最初から解っているのですから」

「ありきたり」

「ええ、甘えです。自分が与える痛みで自分を落とせるのです」

「それでも」

「ええ、そうです。それでも時折、胸を掻きむしりたくなります」

「いつでも」

「ええ。いつだって僕は僕のことは見たくありません」

「嫌いだからな」

「ええ。自分を好きだなんて言える強い人、眩しすぎますから」

「強いのも弱いのも」

「ええ、嫌いです。僕自身が僕自身の心を揺らすことも」



「全ては」

「ええ、嫌いです。自分のことを好きと言う、笑顔の僕なんて」





END.

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