忍者ブログ

黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

White book





その本は白かった。
全てのページが、表紙が汚れのない白色だった。
タイトルはなかった。
どこにもタイトルが書いてなかった。

図書館の棚の奥にひっそりとあった。



ある時一人の青年がその本を見つけた。
何となく青年は本に触れていた。
白い本の中のページが一枚、青い色に染まった。
青年は驚きながらもその色に魅入られた。
飛行士になる事が、青年の夢だった。



ある時一人の少女がその本を見つけた。
不思議に思った少女は本に触れていた。
白い本の中のページが一枚、淡い桃色に染まった。
少女は少し怖くなって逃げてしまった。
友達の少年に、少女は知らぬ間に淡い想いを抱いていた。



ある時一人の男性がその本を見つけた。
隣の本を取ろうとした男性は本に触れていた。
白い本の中のページが一枚、紫色に染まった。
男性はふいに泣きそうな顔をした。
理想と現実に挟まれて、男性は酷く迷っていた。



ある時一人の男がその本を見つけた。
何も思わずに男は本に触れていた。
白い本の中のページが一枚、黒く染まった。
男は暗く笑みを浮かべた。
自分を捨てた女性を一人、男は殺そうと考えていた。





白い本は染まる本だった。

何枚もあった白いページは黒い色に
どんどん染められてゆく。
青年の青色も、少女の淡い桃色も、男性の紫色も。





その本は黒かった。
全てのページが光のない黒い色だった。
タイトルはなかった。
どこにもタイトルが書いてなかった。

図書館の棚の奥にひっそりとあった。



ある時一人の女の子がその本を見つけた。
笑顔の女の子は本に触れていた。
黒い本が、白い本になった。
全てのページが、表紙が、汚れのない白色になった。
白い色に染められた。
女の子はとても無邪気だった。





その本は染められる本だった。
その本は女の子に染められた。

白い本は今も図書館の棚の奥。
ひっそりと並んでいる。





END.

拍手[0回]

PR