――光あれ、光あれ。
ひたすらに祈る声を静かに聞き入る。
そこは名もなき貧しい村。
暗雲が広がる光のない暗き村。
“ミコ” と呼ばれる少女は今日も祈り続ける。
護るべき者たちは絶望し、村を捨てた。
残った者たちは、ただ終わりを待つばかり。
笑い声も泣き声さえも響くことのない場所。
あるのは冷たい時間。
――光あれ、光あれ。
何を願う、ミコよ。
村人はお前を見捨てたというのに何故願う。
何を祈る、ミコよ。
無力で小さな心を痛めて何故祈る。
逃げもせず、泣きもせず、怒りもせず。
いつまで空を見上げているのだろうか?
――光あれ、光あれ。
少女が女性に変わる時間。
気にもとめずに、祈り続けてしまったのか。
それだけしか、お前の心にないのだろうか?
ミコよ、私は知りたい。
私は今お前に教えてほしい。
――光あれ、光あれ。
ミコよ、お前は何故祈っている。
何の為に祈り、何の為に光を求める。
「村と村人の為に」
もう誰もいない村の為にか。
村を捨てた者たちの為にか。
お前を残した全ての為に祈るのか。
「……ミコである前に、私はこの村で生まれ、この村で
育ちました。どんなに辛く苦しいとしても村を愛しています。
私はこの場所を護りたい」
いつか滅びを迎える村でもか。
「今、私の力で村が護れたなら、新たに村に住もうとする
人たちがやって来るでしょう。のちの村と村人の為に……
だから私はこの暗い空が晴れるよう祈るのです」
だから祈る。
光あれと。
私にはどうしても分からない。
けれどその純真な瞳には揺るぎない意思。
くつがえされることはないその言葉。
ヒトは全て滅びに向かい、また生を持つモノのはずだった。
初めてヒト……ミコを見ていたいと思った。
いいだろう、ミコの祈りを叶えよう。
私の光をあたえよう。
END.