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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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空へ





――光あれ、光あれ。


ひたすらに祈る声を静かに聞き入る。
そこは名もなき貧しい村。
暗雲が広がる光のない暗き村。

“ミコ” と呼ばれる少女は今日も祈り続ける。

護るべき者たちは絶望し、村を捨てた。
残った者たちは、ただ終わりを待つばかり。
笑い声も泣き声さえも響くことのない場所。
あるのは冷たい時間。


――光あれ、光あれ。


何を願う、ミコよ。
村人はお前を見捨てたというのに何故願う。

何を祈る、ミコよ。
無力で小さな心を痛めて何故祈る。

逃げもせず、泣きもせず、怒りもせず。
いつまで空を見上げているのだろうか?


――光あれ、光あれ。


少女が女性に変わる時間。
気にもとめずに、祈り続けてしまったのか。
それだけしか、お前の心にないのだろうか?

ミコよ、私は知りたい。
私は今お前に教えてほしい。





――光あれ、光あれ。


ミコよ、お前は何故祈っている。
何の為に祈り、何の為に光を求める。

「村と村人の為に」

もう誰もいない村の為にか。
村を捨てた者たちの為にか。
お前を残した全ての為に祈るのか。

「……ミコである前に、私はこの村で生まれ、この村で
 育ちました。どんなに辛く苦しいとしても村を愛しています。
 私はこの場所を護りたい」

いつか滅びを迎える村でもか。

「今、私の力で村が護れたなら、新たに村に住もうとする
 人たちがやって来るでしょう。のちの村と村人の為に……
 だから私はこの暗い空が晴れるよう祈るのです」

だから祈る。
光あれと。



私にはどうしても分からない。
けれどその純真な瞳には揺るぎない意思。
くつがえされることはないその言葉。
ヒトは全て滅びに向かい、また生を持つモノのはずだった。

初めてヒト……ミコを見ていたいと思った。

いいだろう、ミコの祈りを叶えよう。
私の光をあたえよう。





END.

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