さわり、さわりと風が吹いては木々をささやかせる。
小さな秘め事にくわしく問いただす必要はない。
それはただの無礼な行いでしかなく。
あるいは感情に疎いとしか受け取れない。
生命あるものには、等しく秘めごとがある。
人によりそれは砂一粒ほどであれば。
人によりそれは星一つほどであるだろう。
人によりそれは、知らなければならないことであれば。
人によりそれは、知らないことこそがいい時もあるだろう。
秘めごとは一人のものであり全ての人のもの。
いつかは秘めておけない時も来る。
音にしなくてはならないのか?
心に置けばいいではないか?
秘めごとは秘めごとでしかなく。
知りたがる想いは決して罪などではなく。
決して―――
「……あなたは最期まで何も言いませんでしたね?」
「別にいいだろう。手紙に残したしな」
「手紙でなく声に出してあげれば、あの娘はもっと喜んだでしょうに」
「今更、面と向かって何を言えと言うんだ」
「本当に恥ずかしがり屋も、直りませんでしたね」
「うるさい。お前に言えなくて誰に言う」
「そういうところも、変わりませんね」
「変わらなくて……いい」
END.