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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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風の月



 


「風に、なりたいなぁ」

ぽつりとこぼされた言葉に驚く。
本当は聞こえない振りをしなければならなかった。
けれどそんなことなど、出来るはずがなかった。

「何、だって?」
「風になりたいって言ったの」

彼女は小さく笑って、それでもはっきりと言う。
どうしてそんなことを……?
なぜ君が、今そんなことを言うのか?

いったい君は何を考えているんだ……。

「ずっと思ってたの。風になりたいなあって」
「……それ、は」

それは今までの君を否定する言葉でもある。
それはこれからの君を歩ませぬ考えでもある。
分かっているはずなのに……。

それは僕の存在を否定する。


「あなたがいるから、私はずっとこうして存在できた」

僕が輝けば君も輝くのだから、頑張った。

「私が私であるように。あなたも存在し続けた」

僕はただ君が寂しくなければいいと思っていた。

「悲しかった」


君を苦しめていたのは僕なのか?


仕事を交代するその時。
少しだけ君と微笑み手を振り交わして。

長い間を待ち続けて。
少しだけ君を抱きしめることが出来て。

「最後に赤く赤く輝いているあなたを見送って。
 一年の間に数回だけあなたに触れることが出来て。」

君のためにしていたこと。

「それだけでは寂しくなってしまったの。
 私は欲張りだから……寂しいの」

僕だって。
本当は。

「だから私は風になりたい」

君とともに。
存在していたかった。





「ねえ、聞いた?」
「聞いたわ。月光の姫が風になりたいと……」
「太陽の君は傷ついていらっしゃるわね」
「ああ……お二人はとても愛し合っていたのにな……」

「私たち星は仲間がいるけれど」
「月光の姫と太陽の君はお一人ずつ」
「どちらかを失くしては、存在出来ない」
「お二人はとても優しい方だったから……」

「世界はどうなるのかしら」
「月光の姫が失くなって乱れている」
「あの御方は? ……あの御方は何と……」
「分からない」

「あの御方が一番落ち込まれていらっしゃった」
「お2人を創ったのは、あの御方だものね」
「きっと責任を感じていらっしゃるわ」

「とてもお優しい方たちだ」
「もう少し私たちが頑張ってみせましょう」
「あの御方ならきっとよしなにはからってくれる」
「世界も、お二人の事も」

「あの御方なら」

「太陽の君と月光の姫」
「来世では幸せになれるといいな……」





END.

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