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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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劣等感症候群





「……ねえ、兄ちゃん」
「んー? 何だよ」

兄に向かって声をかける。
すると、やる気のない返事が上がる。

「兄ちゃんって、恋人作る気ないのー?」
「はあ?」

心底呆れた顔で振り向いてきた。

「だってここ何年も恋人いないでしょ?」
「何でお前がそんなこと知ってんだよ」

苦虫を噛み潰したような表情。
思わずくすくす笑う。

「えっへっへっ、何でだと思う?」
「あの馬鹿が教えたな?」

幼馴染を思い出しているだろう兄はふて腐れた。

「いーんだよっ! 今は作る気ないの!」
「何でー? 兄ちゃんモテるのにもったいなーい!」

身内贔屓するわけじゃなく、実際兄はモテる。

「お前は何でそんな事気にするかなあ……」
「いつまでも兄ちゃんが独り身だと思うと心配で心配で」

よよよ、と泣きまねする。

「馬鹿かお前はっ」
「そりゃ酷いわ兄ちゃん!」

ショックを受けたように叫ぶ・
兄はさすがに怯んだ。

「こんなに心配している身内に、なんつー言葉をかけるのですかっ!」
「ちょ、待て、い、いや、あのな、おい」

ばふばふとクッションを叩くと慌てだす。

「そんなの平気で言う兄ちゃんはもう兄ちゃんじゃありません!」
「ええ!? そりゃ言いすぎだろうが!!」


兄は分かっているのだろうか。

「そんな兄ちゃんに育てた覚えはありませーん!!」
「どっちかっていうとお前を育てたのが俺だが落ち着け!!」


こんな冗談をちゃんと聞き入れてしまうとこも。

「うううっ、兄ちゃんの将来が馬鹿な女に寝取られると思うと」
「寝取られるのは確実なのか!?」

嘘泣きと分かってて慰めようとするとこも。

「大丈夫、兄ちゃん。認知してって迫られたら夜逃げ手伝ってあげる」
「兄ちゃんはどこでそんな怖いことを覚えてくるのか心配だよ!?」

どんな我侭でも、可能な限り聞いてくれるとこも。

「兄ちゃん……蛇の道は蛇、知らない方がいいこともあるんだよ」
「ぎゃあああっ!! 悪の道にいるー!!」

ねえ、兄ちゃん。
そんな兄ちゃんがね。

「だから早くあのお馬鹿な幼馴染とくっついちゃってね?」
「……そこでそこに持っていくのかお前は……」



大嫌いなんだよ。
すごく上手く立ち回って。
いつも大事なものを奪っていく。
兄ちゃんなんて大っ嫌いだ。



「ふふん、兄ちゃんのことなんてお見通しだもんねー」
「……はあ……」



でもね。
それと同じくらい好きだよ。
大好きなんだ。

兄ちゃんは自慢の兄ちゃんなんだ。
だから大っ嫌いだし、大好き。
矛盾してるかもしれないけど本心なんだよ。

ねえ、兄ちゃん。
笑う? 怒る? 泣く?
それとも。



「ねえ兄ちゃん」
「はいはい」

「早く結婚して家から出てってね」
「……兄ちゃん泣いていいか」





END.

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