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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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蒼紅 20


蒼の真実




「出ておいで、アオイ

校長室に入ってから俺は、記憶を失くした影響からなのかとっても
おとなしくなったロックハートと一緒に、後ろの方であやとりをしてた。

極力目立たないように、ロックハートの影に隠れるようにそっと
立ってたおかげで、俺は誰にも注目されずに、誰からも声を
かけられることがなかった。

まあ……部屋に入った時、毒にやられて倒れていた俺を最初に
見つけてくれたというマクゴナガル先生には、驚愕の表情で
“どうして貴方がそこにいるのですか!?” って視線を貰ったけどな。

憔悴したウィーズリーさんとジニーが出て行って、呆れながらロンが
ロックハートを連れて出て行って。
そのあとハリーと校長が話してる所に、ルシウスとドビーが来て。

ははは。
いやさすがに、その時は隠れたけど……。

(……だって、ルシウスには絶対に姿を見られたくないし……)

ルシウスたちが出て行って、ハリーが追いかけていって。
そこで初めて、俺の名前が呼ばれた。

俺は物陰に隠れるのを止めて校長の前に立つ。
ふいに実体化はしてないけど、杖からサラザールが出てきた。

『――アオイ、私が何を言いたいか分かるか?』
「…………あー」

(うっわー、サラザールかなり怒ってるよー!!)

慌てて俺は平謝りする。

「ごごごごめんっ! だ、だってあれは不可抗力だろ!? まさかリドルが
 俺の真下にいるなんてこれっぽっちも思ってなかったんだし!!」
『違う! ……はあ……もういい……』

サラザールは疲れたように、深海よりも深そうな溜息をついて額に
手を当てた。
ご、ごめんなさい……。

「さて……。今度はアオイの話を聞かせてくれんかの?」

校長が優しく問いかけてくる。
ああ、今の俺には校長その優しさがすごく嬉しいです。
でも俺はちょっと困ったように首を振る。

「えーと……まあ、マクゴナガル先生の放送を聞いて心配だったんで、
 部屋に直行したんですけど……俺は特に何もしなかったですよ。
 ほとんどハリーのお手柄です。行った時には、ほとんど終わってましたし、
 ただ、最後のリドルの足掻きからハリーを庇ったぐらいでしたから」

すると、フォークスが肩に止まって頬をすり寄せてくる。
背中の辺りで揺れてる尾羽がくすぐったい。
機嫌の良さそうな頭を撫でながら、俺は思わず微笑む。
さっきから、サラザールが不満げに俺のことを見てるけどな。

サラザールの無言の圧力に耐えてると、校長は一つ頷いた。

「すまんのう……少しでも守らねばならんというのに」
「いえいえ。俺は元来こういう性格ですし、正直ホグワーツにいられるだけで
 俺は嬉しいので、校長はそんなに気にしないで下さい。……な?
 サラザールも、さ?」

かつてないほど不機嫌そうなサラザールに笑顔を向ける。
でも、じろりと睨まれた。
そのままの視線で腕を組んで、しばらくきつく俺を見据えたあとで、
サラザールはぽつりと言った。

『……はあ……。前々から、もしやとは思っていたのだが……
 アオイはゴドリックの生まれ変わりで決定だな』
「――は?」

(ごめん、言ってる意味が分からなかったよ)

きっと校長もそうだったんだろう、硬直してる。
サラザールは頭痛がするのか、片手でこめかみを押さえる。
首を傾げる俺と、目を見開く校長に淡々と答えた。

『厳密に言うならば、生まれ変わりとは少し違うか……。あいつの魂が
 お前の魂なのだ。新たにお前となったゴドリックの魂に、私の魔力が
 ものの見事に混ざり合っている』

(もしもし? っていうことは……だぞ?)

俺は眉をひそめ、よくよく考えてみる。
サラザールの見解が本当に正しければ、だ。

俺の魂というものは、元々ゴドリック・グリフィンドールの魂であったもので、
そこにサラザールの魔力を取り込んでしまってるってことだ。
しかも魂と魔力は、ものの見事に混ざり合ってる状態だと。

俺の顔が青ざめる。

(それって――やばくね?)

「まーじーかーよー!! 狙われる可能性が急上昇してる!!」

あまりの事実に、俺は頭を抱え込んでしゃがみこんだ。
なるほど……。
サラザールが不機嫌だったのって、そのせいだったのか!
その可能性、出来ればもう少し早く言ってほしかった。
いや……早めに言われても同じことだったろうけど。

うんうん唸っていると、真剣な顔の校長がサラザールに訊く。

「何故、アオイの魂があの方の物だと……?」
『……実はアオイと出会った時から、薄々予想していたことだ。アオイの根本的な
 性格は、ゴドリックそのものだからな。だが、確信したのはつい先ほどだ。
 フォルが主人ほどに懐き、癒しではない涙を見せた。……決め手は
 私が教えた防御魔法だ。私の魔力の資質なら、雷のエレメントのはずだった。
 しかし、アオイのエレメントは炎。――炎のエレメントを持っていたのは、
 ゴドリックだ』

(そ……そーいえば……)

確かに、フォークスは未だに俺の肩から離れない。
主人であるはずの校長と一緒にいた時すら、全然見たことないほどに、
めちゃくちゃ俺に懐いてる。
それに、サラザールが教えてくれたオリジナルの防御魔法。
あの魔法は、使う人物が持っているエレメント……素質みたいなもので、
防御壁のアクションが変わるっていうものだったはず。

俺のバリアは、確かに炎だったな……。

「うああああー」
『だから目立つことはするなと言っていただろう』
「俺は真面目に、紅眼のことだけだと思ってたっつーの!」

今度は俺の声が沈んでた。





何とかショックから立ち直った俺は、なるべくなるべく目立たないように、
そっと大広間に入ろうと決めた。

(今ならかなり賑わってるだろうから、大丈夫か?)

大広間の扉の向こうから聞こえてくる、にぎやかな声。
俺は大きく深呼吸をしながら、意を決する。
扉を開こうと、手に力を入れた。

だけど、完全にドアを開けきる前に、向こうの方から大きな足音が
響いてくるのに気がついて振り返った。
その姿が視界に入った時、笑って大きく手を振り上げた。

「ハグリッド! お帰りっ!!」
「おお、アオイじゃねぇか、久しぶりだな! ただいま。ダンブルドア先生の
 手紙をエロールっちゅうふくろうが運んできたんだが、途中で道に
 迷ったらしくてな……こんな時間になっちまったわい」

ああ、そういえば。
これをロンが知ったら真っ赤になるだろうな。
思わず、くすくすと俺は笑ってしまった。

「さーさー! ハグリッド! 早く早く! ハリーとロンに会うんだろー?
 ほらほらっ!」
「わ、分かっちょる、分かっちょるから押すなっ!」

俺は早く大広間に入るようにハグリッドの背中をぐいぐい押して、
急かしながらにっこり笑う。
大広間の扉を大きく開いてハグリッドが入っていくと、またしても生徒と、
今度は先生も賑わった。

その賑わいに隠れるようにして、俺は大広間の隅っこに行く。
ハグリッドがたくさんの生徒に囲まれるのを見て、嬉しくて笑ってたら、
ハーマイオニーとジニーが俺に気づいて走ってきた。

「「アオイっ!!」」

しかもご丁寧に両脇から挟むように、抱きついてきた。
あははは、君たち可愛すぎてアオイさんはすごく嬉しいよ。
でも助走付きは苦しいから止めてくれ……。




NEXT.

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