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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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蒼紅 10


蒼と緑が出会う時




「ふーっ! 疲れたあー」

俺は杖を枕の横に置いて、着ていたローブを脱ぐ。
クローゼットにしまうのが面倒で、ローブをソファの背にバサッと
かけてから、ボスンとベッドにダイブした。

結構タフな俺が何が疲れたかというと、俺がスネイプ先生を何気に
援護射撃したあとの気まずい沈黙にめちゃくちゃ疲れた……。
どうやら今まではあんまり気にしたことはなかったけど、俺は体力面よりも
精神面のスタミナがないらしい。
めちゃくちゃ静まり返った部屋を思い出す。

(……やっぱ言わない方が良かったかも)

もう疲れてるわ面倒くさいわで、俺は制服からパジャマに着替えないで
このまま布団もかぶらずに寝ちゃおうかとぼんやりと思ってたら、
ふわりとサラザールが杖から出てきた。
横目で見てみた顔は真面目というか、しかめっ面というか。

「……アオイ……。あの部屋が開くことを、知っていたんだろう?
 私に何か聞くことはないのか」

実体化までしてくれたご丁寧さに多少はありがたく思いつつも、
俺はベッドに横になったまま問いかける。

「んー? 何かって何だよ?」
アオイ……お前はどこまではぐらかす気なんだ」
「はぐらかすって、何をはぐらかすんだ?」

沈黙。

「ほめんっ!! ほめんっへ、はらまーふ!! ひふ!! ひふまま、
 はまみめむへーっ!!」


一瞬の間をあけて、サラザールは俺の頭の下から枕を引きずり出して、
こないだ俺を起こした時のように顔へと押し付けてきやがった。
これって、やられた側は結構苦しいんだぞ!?
後で絶対分からせてやる。

苦しさから逃げるようにバタバタ暴れて叫べば、すぐにサラザールは枕を取る。
サラザールの手の中からようやく枕を奪い返した俺は、もうそんなことを
やられないように枕を腕に抱えた。
そして、じっと、サラザールを見上げる。

「……ああ、俺は全部分かってたんだ。今年、あの部屋のドアが
 開かれるってことはな。だから余計、サラザールに聞けなかったんだっつーの」
「部屋にはバジリスクがいる。――あの猫を襲ったのはあいつだ」
「……それも知ってるよ。なあ……サラザールが、バジリスクを
 置いてったのか?」

俺は首を傾げて訊いてみる。
すると、きしりと音をたててサラザールはベッドに座った。

「……始め、森の中で怪我をしていた生まれたばかりのバジリスクを
 見つけてきたのは、私ではなくヘルガだった。パーセルマウスである私の所へ
 運んできて、手当てをし、あの部屋に住まわせた」

……ということは……あの部屋にいるバジリスクって、
約1千年は生きてるということになる。
バジリスクの寿命は知らないけど、すごい長生きだ。

「サラザールのペットみたいな?」
「……いや……そこまで面倒を見ていたわけではない……。
 だが、忠実ではあったな」

俺はサラザールに分からないように溜息をつく。
だから、聞きたくなかったんだと。

前に俺がサラザールの前で“秘密の部屋”って言った時に、今みたく、
妙に悲しそうに、辛そうにしてたから。

サラザールは絶対ゴドリックを嫌ってたり、マグルを嫌ってない。
そう考えてたのが何となく分かったのか、俺の頭をサラザールがくしゃりと
撫でてきた。

(ほらな……?)

たとえ子孫らしい紅眼で、サラザールの魔力を持ってても、俺は所詮マグルだ。
生粋のマグル嫌いなら、普通はこんな風に出来ないだろうが。

「……いやーでも、女子トイレが部屋の入り口だなんてサラザールも
 考えるよなー、色んな意味で」
「あれは誰も気づかないよう、ロウェナがあとから無断で勝手に造った入り口だ。
 私はそのことについてまったく知らん」
「痛゛い゛ー!!痛゛ぇ゛ー!!分かった!分かったから髪を引っ張るなー!!
 ハゲるー!!」


ハゲなかったのが幸いだった。



――数日たった後。
俺はフィルチと生徒がいないのを見計らい、3階の廊下に来た。
辺りを見回してみると、いくつかの焼け焦げとクモの集団。

それを見てたら後ろから 「あ」 っていう声が聞こえてきた。
振り向くと、いつのまにそこにいたのか、眼鏡をかけたくしゃくしゃの黒髪の
男の子と、炎みたいな赤毛の男の子と、ふわふわした栗毛の女の子が
驚いたように俺を見てる。
俺もハロウィーンの時に見た3人に、正直驚いた。

(ああ、そーか、こいつらも調べに来るんだったな……)

寮が一緒じゃないぶん、こいつらの動向がよく分からない。
まあ本の内容をしっかり覚えてたらそうでもないかもしれないんだけど、
最近は部活に集中してて、読み返してなかったからなあ……。

「……君って、あの時ここに一緒にいたよね? 僕、君みたいな東洋人は
 見たことないんだけど」

ロンの表情に、俺は思わず苦笑した。
怪訝そうな表情もそうだけど、言い方からしてめちゃくちゃ俺のことを
怪しがってるって分かる。
ポッタリアンとしては悲しいといえば悲しいが、これは仕方ない。

「ああ、そういえばそっちも、ここにいたよな。俺は日本から留学してきた
 アオイっていうんだ。レイブンクローの2年に編入してる」

校長に“何で2年生なんです? 俺は14歳です”って手紙を送ってみたら、
“バレんよ☆” って返事が、わずか10分くらいで返ってきた。

(少し予想してた返事だけあって、突っ込めなかったぜ!!)

「……留学生……? あ、フレッドとジョージが寮が一緒じゃないって
 残念がってたのって君のことだったのか」

思わず俺は目を見開く。

(何、俺ってあの双子に残念がられてたのか?)

あの楽しい双子に一度は会ってみたくなる気持ちと、一緒に盛大に
悪戯をしてみたいという気持ちが沸く。
双子には悪いが、俺にはどっちだか見分けがつかないと思うけど。
しかも目立つことするなって、サラザールに怒られそう。

「ねえ、貴方……アオイは何をしてたの?」
「俺もあの時、疑われてたろ? やってもないのにそういうこと言われるのって
 やっぱ嫌だから、何か手掛かりないかなーって、ちょっと探してたんだ」

というか、確認なんだけどさ。
ハーマイオニーの問いに答えると、今度はハリーがのってきた。

「何か見つかったかい?」
「ん、ああ」

俺は頷いて順番に指を指していく。

「あちこちにある焼け焦げと、あのクモの集団ってとこだな」

3人……いやロンを除いたハリーとハーマイオニーが、
俺の近くに寄ってきて、興味深そうにクモの変な行動を見た。
……確かロンは、双子の悪戯か何かでクモがトラウマになったんだっけ。

ロンは今すぐ逃げたそうな顔をして、遠巻きに見てる。
それはまるで、無理に部長の我侭を聞かされてる妹みたいだ。
まあ、俺は少ししか見たことがないけど。
それか、妹の堕天使の微笑みを間近で見た亮一みたいだ。
俺は完全に慣れてるけど。

(はっはっはっ、心なしか寒気がしてきたよ俺

想像だけで鳥肌の立ちそうな腕を擦ってる俺を、調べ終えた3人が、
不思議そうに見てるのに気がついた。

「そういえば、名前聞いてなかったよな?」

首を振って俺が訊くと、3人はそういえばと頷いてくれた。

「ロン。ロン・ウィーズリー。グリフィンドールで、君と同じ2年」
「僕はハリー・ポッター。寮も学年も、ロンと同じだよ」
「2人と同じく、ハーマイオニー・グレンジャーよ。よろしくね、アオイ
「ああ! こっちこそよろしくな!」





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