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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

2 笑わせるピエロ

 
 
 

「マリオネット!」


声をかけると、何をするでもなく
そこに立っていたそいつが振り返る。
一人だったそいつは、振り返っても無表情を崩さない。
にこにこと笑みを浮かべている俺のことを、
何の感情もない目で見てくる。

つまらなくないのかなあ……そんな顔して?
俺みたいにこうして笑えばいいのに。

俺の手には濡れた紅を滴らせる剣が、
そいつの手には真っ黒な硬くていかつい拳銃が。


「楽しかったね、マリオネット。
 今日は特に向こうの “ピース” もやるようだったし」


本当ならすぐに終わる予定だったのに。
大幅に時間を過ぎてて。
おかげでまるで子供のようにはしゃいでしまったよ……。

ひゅんっ、と剣で空を切る。
虚空の中に何枚もの紅の華びらが散っていった。

すごく綺麗だなあ……。
俺はこの瞬間がすごく好きだ。

ふと、マリオネットを見るとまだ無表情。


「……何だい?まさかまた “エンディング” を考えていたのかい?」
「―――ああ、そうだ」


するとそこで初めて口を開いた。
俺たちはこの場を “ゲーム” と教えられた。
目の前に向かってくる何人もの “ピース” を
全て倒していくという、単純明快な “ゲーム” 。

この “ゲーム” にはいくつかのルールがある。

『 “ゲーム” に参加している俺たちは“マスター” の “ピース” を
 倒してはいけない』 とか。

“マスター” ってのは俺たちを“ゲーム” に使ってるボスのこと。
あの人の言うことは絶対に守らないといけないけど、
ルールさえ守れば何も言われない。

気が楽でいいのに。
マリオネットはいつも “ゲームのエンディング” を考える。

そんなつまらない事なんて考えずに、
ただ楽しめばいいだけなのに。


「何度も言うけどマリオネット?俺たちは “マスター” の動かす
  “キャラクター” だよ?」
「もちろんしってる。そしてキミは “ピエロ” だから、
 たのしまなくちゃいけない」
「君は “マリオネット” だから操られなきゃいけないだって?
 楽しくないなあ」
「…………。」


また、黙り込んでしまった。


「楽しめばいいじゃないかマリオネット? 糸がほつれて
 からまる時だってあるさ」
「ぼくはベツに “ゲーム” をたのしみたいわけじゃない」
「そんな事を言ってるのは君だけだけどね。まあいいや、
 それじゃ、また今度」


ひらひらと手を振っても、マリオネットは振ってくれなかった。
まあ、確かにマリオネットの言うことは一理ある。



俺は “ピエロ” だからこそ。
“ゲーム” を楽しんで観客を楽しませなきゃ。





END.

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