鏡ごしに見える彼らの様子に、くすくすと笑う長い黒髪の男性。
瞳も闇より深い漆黒で、額に金のサークレットをつけている。
ふいに、傍にある鏡から声が聞こえてきた。
「ん?ああ……すまないな。何とか終わったようだよ」
『あらそう?それなら良かったわ。あの子たちはあたしの
部下じゃないのに、何だかんだ働きづめにしちゃってるもの。
これくらいはどうってことないわよ』
「そうか」
他の部下より仕事が速いしね、と女性は上機嫌な様子で
そう答える。
『ええ。――でもいいの?本当のゆがみは消えてないんでしょ?』
「まあね」
男性は椅子に背を預け、足と両手の指先を組んだ。
そしてジェームズたちの映る鏡を見やる。
「だが……リリーは目覚めたから、ひとまずこれでいいだろう。
あとは細部までしっかりゴドリックやサラザールたちに
調べさせるさ。何せ、あの子たちが残した種なんだからね」
『ふふふ、あの子たちも大変ね』
「トゲ付きハンマーでお仕置きをする君には、到底適わないと
思うけれど」
『あら?言ってくれるじゃない』
だが女性も、男性と同じようにくすくすと面白そうに笑っている。
「君の方はどうだい?何か面白いことでも?」
『そうね、もうすぐあるかしら』
楽しみを待つ瞳をきらめかせて、女性は笑う。
男性はそれを見ると、にっこりと嬉しそうに微笑み返した。
「あの世界かい?」
『もちろんよ。あたしが造ったとはいえ、あの世界は面白いわ!
特に人間たちが……ね。良かったら遊びにいらっしゃい』
「そうだな、暇を作って行くとしよう」
その答えに満足したような女性は、ふと後ろを振り向いた。
『あの子が降りるようね……。それじゃ、また連絡するわね♪』
「ああ、待っているよ」
そして鏡の中からふっと女性の姿が消え、普通の鏡に戻る。
男性はゆっくり立ち上げると、鏡に手を触れた。
時空の王――クロノス・オブ・オーシャン。
ジェームズたちの上司、ケイはにっこりと微笑んだ。
END.