※ふたりは (けんか) ともだち
「それで、どういうことだ」
帰宅したセブルスが眉をひそめる。
男が不機嫌に言い返した。
「どういうことってのは俺が聞きたいんだが」
「つまり、そういうことだ」
「だから何でそういうことになってんだよ」
「分からんのか? まったく」
セブルスが心底呆れたように重く溜息をつく。
すぐに男は噛み付いた。
「何が、まったく、だ! 分かるわけないだろ」
「ない頭を動かせ」
「ないのは頭じゃなくて情報だ」
「ほう、情報が足りないなどと言えるようになったのか?
人間に近づいたようだな」
「人を芸の出来る犬みたいに言うんじゃねえ!」
怒る男に、セブルスはにやりと笑う。
「事実その通りだろうが。誰だ、アニメーガスになれて嬉々と校庭を
走り回って見つかりそうになった馬鹿犬は?」
「それは俺じゃなくてプロングスだろ!」
「ああそうか、お前はあの阿呆鹿を止めようと追いかけて見つかりそうに
なった馬鹿犬だったな」
「はっ! お前なんか角から飛び出てきたワームテールに驚いて、
危ないから近寄らねえって堂々言ってた人狼の前に1人で飛び出て
涙目だったじゃねーか」
男は意地の悪そうな笑みを浮かべた。
その言葉に、今度はセブルスが言い返す。
「涙目じゃない! あの阿呆が気を逸らそうと、いきなりあいつに
水をかけたのが私にまでかかったんだ!」
「そういやアレでお前のあだ名がスニベルスになったんだよな」
「ハリーの前でスニベルスと言うな! 馬鹿犬!」
「俺だって馬鹿犬じゃねえ!」
「話が逸れたが、ここに来る時には連絡しろと言っただろう!
魔法省に嗅ぎつけられでもしたら終わりだと分かってるのか?」
「分かってるって、ちゃんと防衛術かけてあるしよ」
男はしっかりと応える。
セブルスは腕を組んで頷いた。
「ふん、それならいいが。しかしディメンターが動物の気配を
読みにくいとはな。色々と対策がとれる」
「身体張って分かった情報だ、感謝しろよー」
「1匹ぐらい仕留められたらの話だな。いつまでいるのだ」
「ああ、今回はハリーの様子見だな。この近くは安全だったから問題は
ないだろ。あとはあいつらとダンブルドアに報告済ませてくる」
「移動は四足だな? ならば変身薬は少量で良いか。半日待て」
「おう。……あ、だから、レグの幽霊っぽいのはどういうことだ!」
「見たままだ」
セブルスと、シリウスという男の会話にまったくついていけない
レギュラスは、ソファに座るハリーの横で途方に暮れていた。
犬から人へ戻った男は――本当にあの人なのだろうか。
「とうさまとしりうす、きょうもなかよし!」
『えっと……な……なか、よ……し?』
「にいさま、れぐって?」
『……僕の愛称ですよ……』
NEXT.