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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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政宗-1




「あー、い……ったたたあ……!!

三成に鉄扇で引っ叩かれた頭がじんじん痛む。
ううう……、たかが将棋で十連勝しただけなのにさ!
……そりゃーあたしも、そんなに勝ったのは初めてだから?
少し調子に乗ったのは悪かったよ。

おうとも悪かったさ!!

だからって鉄扇で思いっきし頭を叩くなってば。
あんたのソレの威力知ってるんだから、余計に怖いよ!
怪我するよりも、馬鹿になったらどうしてくれる。
だってあたしはちび宗に『馬鹿め!』って言われたくない。

……いやまあ……。
とっくに言われてるけど……。

「みーつーな…………り…………?」

一言でも文句を言おうとジト目で顔を上げて。
非常識な現実に、あたしは固まった。



別にそこに申し訳なさそうな三成がいたわけでもなく。
そんな三成天変地異だ!

馬鹿にしきったような目の幸村がいたわけでもなく。
可愛げのない幸村なんて許さない!

小さくなっておどおどしたような兼続がいたわけでもなく。
ある意味キモい!

無表情にかしこまるような左近がいたわけでもなく。
いきなり怖いっつーの!



――広い、荒野。

それならまだ良かったのかもしれない。
あたしの周りには無限に、刀や槍や銃やらが捨てられている。
刀は刃こぼれし、薄汚れた赤い血がこびりついている。
槍は柄が折れて使い物にならず、これにも血がこびりつく。
銃も火薬がなければ、ただの玩具だ。

「……ここ、どこなの」

武器に埋め尽くされるように倒れる人間。
きっちりと武装していても、すでに事切れている兵士。
踏み荒らされ、血と土に汚れた軍旗。

そこはどう見ても戦国乱世の世――。

あたしがついこの間まで立っていた時代。
あたしがついこの間まで戦っていた時代。

終わった、はずだ。

三成と幸村と兼続と左近と。
……皆と争いの時代は、とっくに終わらせたはずなのに。
殿の、秀吉様が言う笑って暮らせる世を作ったはずなのに!!!

「ここはどこだ……!!」



わぁあああ……!!



はっと振り向くと、残る兵士がある場所に集中している。
良く見ると、武器を構える兵士たちは円状に広がっていて……
その中に2人の武将がいる。

不運を極めたのか、策を殺めたのか。
――どちらにしろ。





「……劣勢ですね」
「ああ」

ビリビリと感じる殺気。
ゾクゾクと震える空気。
目前の敵と背中の味方。

ニィ、と口はしをつり上げる。

自信と余裕の表れ。
窮地を変える衝動。

刀を握る手に力が入る。
しかし、ふいに風向きが変わった

凛とした声とともに。

「Hello, it is that two people!(やあ、そこのお二人さん!)」
「「!?」」



何となく、あたしはその場の気分で英語で話しかけてみた。
どうせ向こうは英語分からないんだし、別にいいよね。
背中合わせに敵と向かい合っていた2人は、驚いたように振り向く。
あたしは不敵に笑いながら、軽やかに片腕を振るう。

ビシィッ!!

黒革の鞭――あたしの相棒の 『双黒桃』 が殺気を打ちはらう。

ふと見ると、青い服を纏う1人は右目に眼帯をしてる。
……どこかで感じるデジャ・ヴ。
でも今はそんなこと、気にしてる暇はない。

「見た所では Inferior (劣勢) 。君たちが良ければ加勢するよ」
「貴様……何者だ!?」
「小十郎」

もう一人の背の高い男が、不審なあたしの登場に睥睨する。
それを眼帯の青年がさっと片手で制した。
どうやら小十郎っていう男は、眼帯の部下のような感じらしい。
あたしは肩をひょいっとすくめて笑う。

「初めまして。あたしは元宮あきらだよ。
 ……で、良ければ加勢するけど……どうする?」
「…………。」

本当ならこんなゆるーく会話してる暇はない。
ま、さっきの牽制で少しはおとなしくしてるみたいだけど……、
それもあと少しで限界かな。

ちらりと周囲に目を向ければ、さっき散らした殺気が徐々に高まって
戻ってきてるのが分かるしね?

すると、眼帯の人が低い声で聞いてくる。

「……お前はどこのもんだ?」

この眼帯の人、面白い。
非常識な6本の刀もそうだけど、内から発してる覇気が。
とことんカリスマ性も持ち合わせてると見た。

「別にどこにも? ここはあたしのいた場所じゃないみたいだし……ね。
 とりあえず一番に見つけた君たちに話しかけたんだけど、OK?」
「……… I will be good. (いいだろう) 」
「殿!?」

あたしは、じっと彼の左眼を見つめて言ってやる。
それをしばらく受けてから、あきらかに面白そうに彼は頷く。
小十郎とやらが慌てて振り返るけど、聞く耳もない。

――っていうかあんた今、英語を話しましたね?
しかも発音すごく良かったし……戦国の人なのにすごいな。
そういえば眼帯の人が 『殿』 って叫んだ気が……。

「いいじゃねぇか、小十郎」
「まったく……政宗様は!!」
「――政宗?」

にやり、と眼帯の人が悪戯に笑んだ。

「 Oh, sorry ……そういや自己紹介がまだだったっけな。そっちは
 俺の部下の片倉小十郎。そして俺は、奥州筆頭伊達政宗だ!
 行くぞ小十郎、あきらっ!!」
「仕方ありませんねっ!! 貴方の背中は私が守ります!」
「せっかくの Party だ! 派手に楽しめよ!!」

駆け出した2人の背に続いて、あたしも飛び出す。

「いきなり呼び捨てか。……ははっ、上等! Yes, sir !」

そしてあたしはまた戦国乱世の中に放り込まれた。
―― 『戦国 BASARA2 』 のゲーム。
今度はそこにいるんだと、気づくのはもう少し後になってから。





「……あきら殿が消えてしまいましたな……」
「ふう……あいつは突然来たと思えば突然いなくなるな」
「将棋、勝ち逃げされましたね、殿」
「……ふん。どうせまたあとで、ひょっこり現れるだろう」





新しい邂逅に、乾杯しようじゃないか

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