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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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政宗・番外-3




――誰も信じないと決めた。

ヒトは裏切るものだと、知っているから。
そして一方的にこちらが傷つくしかないから。
それは痛くて、痛くて――。

それでもまだどこかで希望を持ってしまうから。
もう、ヒトを信じてはいけない。





ずきりと痛む足に顔をしかめる。
数十の棘のついたカセは、もがけど外れることがない。
うかつだった……何故、こうも見え透いたワナに捕まったのだろう。
ユダンよりもたちが悪いではないか。

ふと、目を見開く。

ケハイ……ヒトのケハイが近づいてくる。
ワナをはったオロカモノか。
はたまた、迷い込んできただけのモノか。
この地を荒らしに来たモノか。

武器を向けるのならば、すぐさま噛み殺してやろう。
殺 す し か な い の な ら ば。



「 Oh, ……こりゃあ、犬神、ってヤツか?」

心底、驚いたような声。
ヒトの声をこんなに間近で聞いたのは、いつぶりだろうか。
眉をひそめて、じろりと前を見やる。
そこには顔にいくらか幼さが残るヒトの男(お)。

「……ああ、罠にはまってんのか? ったく、この area は禁猟だってのに
 ……見つけたらシバく」

ぶつぶつと呟くヒトの男。
武器を持たぬその姿に、戸惑いもしたが珍しくもあった。
私の姿を見たモノは恐れ逃げ出すか、襲い掛かる。
だというのに……このヒトの男はそれをしない。
醸し出すケハイからは、まったくそれを感じられない。

「そう睨むな。今、罠を外してやるよ…… you see ? 」

ゆー……しい?
何のコトハを口にしているのだろうか。

そのまま睨み続けていると、さっと私に近づく。
ゆらりと数本の牙を見せつけると、何やら口元を軽く持ち上げて
不敵そうに笑んだ。
まるで、心を読んだかのように。

ヒトの男はすばやく足の罠を外し、私と少し距離をとる。
そして身近にあった岩に腰を落とした。

「傷の手当てはどうすんだ?」

睨む。

「自分でやんのか。お前はこの area の guardian なのか?」

唸る。

「――悪いな、罠を作ったヤツは見つけ次第、俺がシバいとく。
 ここは俺が管理してる area でもあるしな」

……まったく何なのだろうか、このヒトは。
それに、管理しているだと?
ヒトが、天より授けられた自然を、管理しているか。

オロカでゴウマンなヒトに、自然を守れるとでもいうのか。
ヒトの手で壊し汚す――たった、それだけであろう?

「……手厳しいねえ。確かに guardian ほどまでは無理だろう。
 だが、俺は俺のモノを守るぜ」



――おこがましい!!!



刹那、怒りがつきぬけた私は、痛む足を無理やり無視し、
その場を走り去った。
何なのだ――何だというのだあのヒトは!?

オロカな……ゴウマンな……。
自然によって生かされていることさえも気づきもせず。
山を腐らせ、野を荒らし、海を汚し、空を燃やし……。
人間は自然を好き勝手に裏切るのだ。

ヒトはそういうものだ。

ヒトとはそういうものなのだ!!







「 Hey ! こんな所にいたのか……探しちまったぜ」

音沙汰のなかった数日の後。
藪を突き破って小さい空間に足を踏み入れてきた姿は、
先日とまったく変わらぬフソンな態度だった。

……あれだけ怒りをぶつけても平然として来るとは。
まったくもって何という神経だ……。
何を好き好んで、またこの地に現れた?
気が変わらないうちに、さっさとここから離れるがいい。

「すぐ帰るさ。だが、言い忘れたことがあったんでな、きっちり言いに
 きてやったぜ」

……言い忘れただと?
どうせ、言を固めたとて、たかが戯れにもならんコトハだ。
私が聞く必要などはどこにも――。

「見ていろ。この俺は必ず日の本の天下をとってみせる。その暁には、
 お前たちが守る自然をも guard すると決めた。待っていろ、
 独眼竜伊達政宗に出来ぬことはない!

……な……何を……言っている……?

思わず唖然としてしまった私の姿を見てフテキに笑う。
そのまま踵を返し、藪の中へ消えてしまった。

何なんだ、あのヒトは……日の本の天下を取るだのと。
……馬鹿げたコトハ……戯れというより、まほろば。
いや、まほろばというより――。

違う……考えるな……!
ヒトは裏切るものなのだから……!!!

――瞬間。
ケハイがした。

遠くにいるが隠すことのないサッキは、空気を震わす。
やはりヒトというものは――いや――。
このケハイは、あのヒトの男のものではない?
もっと浅ましいヒトのケハイだ。

それが分かってしまった己に、辟易する。

私の存在を知り、付け狙うモノでないならば、また武器を持たずに来た
あのヒトの男目当てか。

気にすることではない。
私の守る場所を穢すヒト以外は、どうでもいい。

どうでもいい。





「 HA ! それで隠れてるつもりか? さっさと出てこいよ」

隠そうともしない殺気に笑んで、挑発を送る。
するとすぐに、刀を構えたヤツが茂みから出てきた。
何だよ一人か……まあ、気配で分かっちゃいたが。

worthless (つまらねぇな) ……。
ここまで普通にこられると、 tension 下がりまくるぜ。

「奥州筆頭、伊達政宗っ!!」

はいはい…… hot だねえ。
まあ、そういうのに関しちゃあいつには適わねえだろうが。

だとしてもだ――とりあえず、ここで殺りあうのはごめんだな……。
俺はさっきあんな断言しちまったんだ。
こんなとこで、いきなり違えるわけにはいかねえ。
訂正する気なんかねえし。

刀を構える姿に、俺は笑みは消さないでいる。
確かに俺は今、刀を持ってはいない。

guardian に会おうとするなら、武器は持ってこれねえ。
だからと言って――てめえに俺が負けると思うか?

「おいおい、それでも俺を斬りてぇのか? もっと気合い入れてから
 向かって来いよ……膝が震えてんぜ?」
「貴様……!」

挑発に煽られ、刀を振り翳す。
さて、とりあえずあいつの刀を折っ――

ザシュッ!!!

「な……!」

目に飛び込んできたのは、蒼銀の毛並みと紅の吹雪。

茂みから飛び出した guardian が、あいつの胴体を引き裂き、
あいつの刀が guardian の喉元を切り裂いた。

どさりと倒れる両者。

敵はそれきりひとつも動かなくなったが、 guardian は倒れた衝撃で
小刻みに震えている。

「ばっ……何してんだっ!!」
『――さあ、な……』

か細い声でguardianは俺に答える。
この際、人の言葉を話せたのかどうかなんて関係ねえ。

「何で出てきた!? 何で俺を助けたりした!!」
『……愚か、者が……誰がヒトを助けたりするものか……。
 私は……この森を……守った、だけだ……』

「……お前っ……!?」

瞳から薄れていく光。
だが、それでも俺を真っ直ぐに強く射抜いてくる姿は、まさに、
guardian の威風を放っていた。

最初に姿を見た時は、あまりの壮大さと威圧に犬神だと思ったが……
ただの犬神じゃないってことか?
俺の思考を読んだのかそうでないのか。
くっと、小さく初めて笑んだ。

『……覚えて、いるぞ……』
「何?」
『この地を守ると言ったコトハ……出来ぬ、ことはないとの、笑み……。
 そして、天下をとると……言った……コトハ……
 その意思……』


一言一言。
噛み締めるように。

『こ、の……私が……覚えていると、口にしたのだ……。違えることは、
 決して許さん……』

「……guardian……」
『私は……覚えているぞ……』

一言一言。
初めて信じるということを行うように。

『……身心……人、なれども……雄々しき独眼竜――。
 伊達、政宗……よ……』


それを最後に、まるで砂のように消える姿。
残ったのは、俺と、地に伏した俺を狙ったやつだけ。

「 Shit ……! 覚えてるくらいなら、天下を取る最後まで、
 見届けやがれ……!!」





――そういや、あれからどんぐらいたったっけか。

ずんだもちを口にしながら、俺はぼんやりと考える。

……あのあとは、色々と急がしかったな。
禁猟指定を厳しくして、天下を取るための戦に出て。
小十郎や綱元はまだしも、俺が真面目に執務してるのに成実はかなり
変な眼向けてきやがってよ……。
本気で Hell を見せてやるかと思った。

つーか、思い出したらイラついてきたぜ。

「――政宗様。あきらをお見かけしませんでしたか」
「 An ? あきら?」

庭先から小十郎が少し慌てたように問いかけてきて、俺は縁側に
寝そべっていた体を起こし、顔をしかめた。

あきら、っつーのは俺の部下だ。
……部下と言ってるが、実際は成実みたいな位置にいるが。

「見てねえ。何だ、どうかしたのか?」
「実は……今朝方からあきらの姿が見えぬのです」
「今朝? もう昼過ぎじゃねえか……あの馬鹿」

がしがしと頭をかいて、残っていたずんだもちを飲み込む。
めんどくせぇと思いつつ、縁側から立ち上がる。

――瞬間。
大きな影が俺を飲み込んだ。

「ただーいまー」

小十郎がすばやく俺を背に庇った行為もむなしく。
その場に、相当間抜けな声が振ってきた。
顔を上げれば、少し先にあきらが手を振って立っていた。

「てめえ……あき…………っ!?

怒鳴ろうとした言葉は、思わず喉に留まる。
驚いたのはあきらの言動にじゃない。

あきらの後ろの――。

「ねえ政宗、この犬神があたしに仕えたいんだってさ。別にいいよって
 言っちゃったんだけど……いいよね?」

――蒼銀の獣。
不適に、楽しそうに、俺の方を見て笑んでいる。

『主・あきらに付けられし我が名は蒼雷(そうらい)。――こうして、
 合間見えたことを、嬉しく思うぞ……独眼竜、伊達政宗公』


…… Shit, 俺としたことが……。
ああ、そうだったな?
お前は “神” だったんだよな、 guardian .

それにしちゃ、ずいぶん character 変わったんじゃねえか?
俺の反応を楽しんでやがるとはな。

「ああ……別に構いやしねえよ。俺の天下見せてやる」
『ほう、それは是非とも見届けたいものだ』

ああ、見せてやるよ。
今度はちゃんと見てやがれ。





そう、新しい発見には
いつもリスクがある

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