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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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蒼紅 6


青の訪問者、蒼の存在




『いい加減起きないか』
「むおっ!?」

気持ち良いふかふかのベッドと枕と、布団の中。
夢も見ないでぐっすりと熟睡していたらしい俺の顔に、
いきなり何かが押し付けられる。
そのせいで、変な声出しちゃったじゃないか……。

俺の機嫌が少し低下する。

(……まったく誰だよ……? 俺の寝起きの第一声は、
 “あと1時間”だって決まってるっつーのに!)

いつもより重い目をこじ開けようと、したけどできない。
できるわけがなかった。
だって、ふかふか枕を顔に押し付けられてんだから。

「うーむまーっ!? みむー!むーむーうぇー!!」

俺的に、“夕菜かーっ!?死ぬー!はーなーせー!!” って
叫んでるつもりだった。
だけど俺に枕を押し付けてる相手にとっては、それはかなり意味不明な
言語だったらしい。

「……何を意味不明な言葉を喚いてるんだ。さっきから何度も
 呼んだというのに、まったく起きないお前が悪い」
「――ぷはっ!」

溜息付きでそう言いながら、ようやく枕を離してくれた。
一言でも文句を言ってやろうと思ってバッと顔を上げたけど、
俺と同じ紅の瞳を見て、その気はすぐに失せた。

「………………あ、おはよう、サラザール」
「その間は何なんだ?」
「別に」

昨日のことは夢だとは思わなかった。
まさか、俺を起こしてくれるとは思わなかっただけで。

がしがしと頭をかきながら外を見る。
窓の外には、日本と比べると少し違う青空が広がってた。

(あれ? もう朝なのか? さっき寝たばっかりだと……って……
 俺、学校――皆勤賞狙ってたのに!! うーわー今日も朝練あったのに……
 部活が、遊びが……俺の負け……!)

すっごい悔しいけど、そう言ってても何も始まらない。
溜息をつきながら仕方なくむくりと起き上がる。
ふと、枕に触れた俺は首を傾げた。

「そういや、何でサラザール実体化出来てんの? 俺の魔力とったのか?」

正確には、俺のじゃなくてサラザールの魔力なんだけど。
洞窟で最初にちゃんと確認した時に“生気はとらない”って言ってたし、
そうそう体もだるい感じはしてないから、一応そう訊いてみる。
そしたら、サラザールがまた 「質問ばかりだな」 って呆れた。
しょうがないじゃん、と文句がつのる。
いくらハリポタ読んでた俺でも、分からないことがある。

「私が杖に封印されている記憶なのは、覚えているな?
 その杖でお前が魔法を使うと、その分の魔力が杖の中に溜まっていく。
 昨日は何度も魔法を使っただろう?その分で実体化しているんだ」

ああ、それだったら納得がいく。
ヴォルデモートの屋敷から逃げる時にたくさん使ったし。
サラザールの言葉に、俺は軽く頷いてみせた。

「了解」
「それより、お前に客が来ているぞ」
「俺に客?ってサラザール、人を指差しちゃ失礼だぞ……
 って……」

サラザールが指差すのを注意して、その方向に顔を向ける。
すると、そこに一人のじいさんが立ってた。
口元からはえたかなり長いヒゲを、しっかりベルトに挟んでる。
挟むんじゃなくて、せめて結んだ方がいいんじゃないかな?
引っかかって痛みそうなんですが。

かけているのは、半月眼鏡。
その奥に、俺とは正反対の青い瞳が楽しそうに笑ってた。

(えーっと)

「ダンブルドア校長先生ですか?」
「おお、君はわしのことを知っておるのじゃな? わしとしては、
 初めましてじゃがのう」



家族一寝起きが悪い俺が、一気に起きたぞ妹よ。



制服のままで寝たから、俺の着替えは必要がない。
サラザールか校長のどっちかが魔法で出していたのか、
昨日見た時には部屋になかったはずの、ゆったりとした大きめの
ソファに校長は座ってる。
俺も向かいのソファ、サラザールの隣に座ってみた。
おお……こっちもふかふかだ。

「さて、それでは改めて挨拶をしようかの。わしの名はアルバス・ダンブルドア、
 ホグワーツで校長職に就いておる者じゃ。夜中に誰かがホグワーツへと
 訪問をしてくれたことに気づき、今朝から探していたのじゃが……
 つい先ほど、彼自らこの部屋へ案内してくれてのう」
「今朝? ……なあ、今って何時?」
「昼の2時をすぎた所だ。だからいい加減起きろと言ったんだ」

(朝じゃなくて昼! 昼っていうより午後だったのか!?)

いや、確かにいくら俺が家族一寝起きが悪いって言ったって、
そんなに寝過ごしたことなんかなかったんだけどな、俺は。
その様子を見て、ますます校長は楽しそうに笑う。

「あー、あの、えっと!」
「慌てなくて大丈夫じゃよ、彼から多少の事情は聞いておるのでの。
 まず、きちんと名前を教えてくれんかのう」
「はい!」

おい、事情は説明しても名前は教えてなかったのか、サラザール!
そりゃあ直接、自己紹介した方がいいんだろうけどさ。
慌てて俺は頭を下げた。

「あ、すいませんっ!初めまして、ダンブルドア先生。俺はアオイ・V――
 あれ? アオイ・V、……?な、なん……っ!!

俺は決して、自分の名字を忘れてるわけじゃない。
ちゃんと自分の名前を言おうとしてる。

なのに、どうして俺は“アオイタカハシ”って言えない?
どうして――自分の名前を、“アオイ・V・タカハシ”としか
言えなくなってるんだ。

頭が混乱してきて、俺はパニックにおちいる。

(いや、ちょっと待てよ!)

とある気づいたことに、俺はいった思考をとめる。
そしてじっくりと昨夜の事件を思い出す。
もしかして、俺がどうしても口にしてしまうミドルネームの“V”は――
“ヴォルデモート”の“V”……?

そうだとしか思えない。
瞬間、俺の頭の中が煮えくり返ったような気がした。
火山のように燃え上がったような感じに。

(……ちっ、ちくしょー!! あいつが俺に使った束縛の呪文って、
 こういう効果も出るのかよ!!)

俺はサラザールにも校長にも構わず、叫ぼうと思った。
だけど、口を開いた瞬間、急に頭痛と吐き気に見舞われて、
がくりと項垂れる。

「……やはりか……。もう良いぞ、アオイ。彼からそのことも
 きちんと聞いておる。すまんの、確認のため名前を訊いたのじゃが……
 無理をさせたようじゃな……」

あいつが口にした、あの名前。
俺がどういうわけか確信したこの世界への、束縛。
俺をここへ拘束する――束縛の呪文。

どちらにしろ、それがどのくらいの効き目を持ってるのか。
遅かれ早かれ俺の身を持って知るわけってことか……。
そして、束縛を解くのもあいつ次第。
頭痛と吐き気とはまずい。
ミドルネームなしの名前を言おうとすると、こうなるのか……。
世界からの束縛に抗うってことと一緒だろうしな。

「い、いや、あとで知っても一緒ですし、別に謝らなくてもいいですって。
 サラザール悪い、ちょっと肩貸してくれー」
「…………。」

俺はいいとも駄目だとも言われる前に、さっさと隣にいるサラザールの
肩によっかかった。
って言っても、サラザールの身長は俺よりも断然に高いから、
肩っていうよりは腕なんだけど。

「まったく……少しの間だけだぞ」
「んー。分かってる」

でもサラザールが駄目だって言わないこと。
俺としては結構、確信してたっては秘密なんだけどな♪





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