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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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蒼紅 18


そして蒼は部屋に




――ちくしょーちくしょーちくしょー!!

『……いい加減にしないか、アオイ。あの出来事は、お前のせいでは
ないとよくよく言ったはずだ』
――だって俺は知ってたんだぞ? 何か策を打てたはずなんだ。

あまり足音を立てないように廊下を走る。
本調子じゃないせいか、まだ体が少し重く感じる。
だけどマクゴナガル先生の放送を聞いた瞬間、俺はベッドを飛び出し、
誰にも見つからないように保健室を抜け出した。

その時にカーテンの隙間から、ちらっと見えたのは、石化した
ハーマイオニーだった。

どうして止められなかったんだろう?
どうして俺は石化してないんだろう?
どうして助けられなかったんだろう?

――高橋・V・のド阿呆。

こんな時もミドルネームが外せない俺が、またむかつく。

アオイ
――ごめん、分かってる。

咎めるような声に、俺は溜息をついて謝った。
俺が駆け込んだのは、秘密の部屋じゃなくサラザールの部屋。
毒が身体に回ったせいで喉に力が入らなくて、全然声が出ないから、
魔法が使えなくてサラザールが実体化することが出来ない。

でも魔法を使わなくても代わりになるものが、ここにある。
俺は、テーブルの上に放ってあったそれを引っ掴む。
リドルの日記の紙だ。

――どう? サラザール。これの魔力使えそう?
『……ああ、何とか大丈夫だろう』

黙ってその紙の魔力を観察していたんだろうサラザールは、
しばらくしてから、しっかりと肯定した。

(あー良かったあ……って……あれっ?)

安心したのも束の間、そこでふと俺は静止してしまった。
今は実体化も何も出来ないっていうのに、どうやって魔力を杖に
移すんだってことに気がついたから。

――めちゃくちゃ意味ねぇじゃん!!

無駄に時間をロスしてしまったのかと慌てる俺を、サラザールは
冷静に押し留めた。
そして、少し考えるような感じで話す。

『確かに実体化していない私では難しい……が、アオイの体を
 借りれば、何とかなるにはなるのだが……』
―――じゃあ使え。今すぐ使え! さあ使え!!
『……お前は少し戸惑え……』

即答して了解した俺にサラザールはかなり呆れた声を出す。
だって時間が争ってるし。
俺の体で何とかなるんだったら良いじゃないかと思う。
それが俺の寿命を減らすとかだったら、ちょっと嫌だけどさ。

『しばらく意識が途絶える。目を閉じろ』

俺は頷いて、すぐさま目を閉じた。



しばらくして。
くらっと目眩みたいなのがしてから、俺の意識が戻る。

――ん……終わったのか……?
『終わった。すぐにでも馴染むだろう。行く――どうした?』
――ちょっとだけ。

魔力を維持するつもりなのか。
杖から出てこないままのサラザールを止める。

――サラザールはバジリスクのこと、どうするんだ?

訝しげに急かそうとしたサラザールの声が止まった。
急がなくちゃいけないのは分かってるんだ。
だけどこれだけは、どうしても聞かなきゃいけないことだ。

『……この間は、まだ私の言葉を理解出来るようではあった。
 だが、今となってはもう分からない。この事件を完全に終わらせる以上は
 ……殺すしかないだろう』

一瞬だけ躊躇したような言葉。
けれど、最後はきっぱりと告げられた。
本当にいいのかだなんて、安っぽくて現実的じゃない言葉をサラザールに
かけられるはずがない。

もし生徒を襲わないようになっても、学校に怪物がいることは事実で、
安心できないし、見逃すことなど出来ない。
生徒も怖がるだろうし、きっと多くの人たちが、口を揃えて反対するだろう。

サラザールは、それを分かってるんだ。

―― ……分かった。

俺は静かにそう答えて杖を握りなおす。
そして、すぐさま湿っぽくなっていた考えを切り換えた。

暖炉の中を覗き込み、一角の場所を思いっきり蹴る。

ガコン!

重い枷がはずれるような音がする。
暖炉の底の部分が、両脇に取り除いて暗い穴が開いた。
サラザールが固い声を出した。

『この穴から秘密の部屋の中まで直行する。準備はいいか』
――もちろん、すでに準備万端っ!!

そう強く言い返して、勢いよく穴の中に飛び込む。
穴の中は滑り台のようになっていて、とてつもなく長かった。
しかもその斜度は、ほとんど直角だとも言っていい。
ジェットコースターも適わない気がするな。
ほとんど落ちてるって言うのが、当たってるかもしれない。

――そりゃそーか、最上階から地下深くだもんな。
『いや、移動距離に関しては、ある程度ショートカットしている。もうすぐ
 部屋に出るぞ』

呟きの答えに下を見ると、確かに明るくなってきた気がする。
暗かった穴の中に、一気に薄明かりが入り込んできた。

落ちる俺の目に映る、確かなスローモーション。
俺の声を無くしたバジリスクの毒牙が、銀の長剣を構えるハリーに
襲い掛かるシーン。

誰にも聞こえない俺の声と。
サラザールの声がぴったりと合わさった。



―― 『貫け!!!』



ズンッ!!

ドスッ!!

ゴンッ!!



ハリーの剣がバジリスクを強く貫き。
バジリスクの牙がハリーを深く突き刺し。
俺がリドルの上に着地する。

それは……ほぼ、同時だった。





NEXT.

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