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黒犬倉庫

版権・オリジナル・ CP 小説中心。よろずジャンルなブログ(倉庫)。二次創作や、オリジナルキャラクターが主軸となる作品が多め。受け付けない方は閲覧はご自重下さい。原作者・出版社等の関係はありません。

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蒼紅 15


日記の紙と蒼の書く内容


やっぱりというか何と言うか。
新学期になると、薬のせいで入院してるハーマイオニーが継承者に
襲われただの噂が飛び交っていた。

事情を知らないはずの俺が、お見舞いに行くのは変だよな……。
退屈してるかどうか分からないけど、噂を聞いたってことで、俺オススメの
本でも送ってみようかな……?

そんな風に考えながら歩いてると、保健室に向かう方の角へと
ハリーとロンが曲がっていくのが見えた。
声をかけようと2人に近寄っていこうとした時、ハリーのポケットから、
何かがことりと床に落ちた。

2人は話に夢中になってて気がついてない。
俺はそっとその本――赤い日記を拾った。

ドキリと、1つだけ緊張に鼓動が鳴く。
それに対して、にやりと俺は小さく笑ってみせた。
一番後ろの真っ白なページを、分からないよう出来るだけ綺麗に破いて、
すばやくポケットの中にしまいこんだ。

そして、ハリーにほがらかに声をかけた。

「ハリー!」
「あ、アオイじゃないか。どうしたんだい?」

まるで何事もなかったように後ろから声をかけてきた俺に、
ひょいっとハリーが振り向く。

「はい。これ、落としたぞ?」
「えっ……あ、ありがとう」
「日記を落としちゃ駄目だろー? さすがに俺は中身は見なかったけど、
 他の奴だったら見ちゃったかもしれないぞ」
「う、うん」

笑って日記を渡すと、ハリーは何も言わないで苦笑した。
その顔を特に注視したりせずに軽く手を振って、2人と別れると、
俺は急いでサラザールの部屋へと戻った。



バタン!!

強く扉を閉めて、杖を取り出してテーブルに置く。
ローブを手早く脱いでベットに放り投げてから羽根ペンとインクを用意して、
ソファに座り、ポケットから紙を取り出して睨みつける。

――日記の年号は、50年前。
持ち主は、トム・マールヴォロ・リドル。

『……アオイ……。それに何かを書くつもりなら、用心しろ。
 その紙……たった1枚のみだが、魔力がかなり大きいぞ』
「大丈夫、分かってるって」

ふわりとサラザールが俺の隣に来て忠告する。
俺はにんまりと笑みを浮かべた。
羽根ペンにインクをつけて、準備万端。

俺はゆっくりと、羽根ペンを紙に滑らせた。

「…… まぁるかいてぇちょんっ♪ まぁるかいてぇちょんっ♪ おまめぇにねが出て♪
 うえきばちぃ、うえきばちぃ♪ ろっくがぁつむいかぁにユーフォーがぁ♪
 あっちいってぇ、こっちいってぇ、おっこちて♪ おいけがふたぁつ、できました♪
 おいけにおふねをうかべたらぁ♪ おそらぁにみかづき、のぼってたぁ♪
 ひぃげをつけたぁら~♪


 ……ぶっ、あははははっ!

多分、俺だけだと思う――リドルの日記に絵描き歌をしたの。
しかも日本のマグルの子供が、いつの時代にも憧れては止まない
未来の青い猫型ロボット。

隣で俺の様子を慎重に見てたサラザールも、その結果に目を見開いて
ぎしっと固まった。
俺は俺で、ばんばんとテーブルを叩きながら大爆笑してる。

苦しいー!!

<……誰だい、僕の日記に変なタヌキの絵を書いたのは?>

傑作の猫型ロボットが紙の中に溶けるように消えてからしばらくして、
何か不機嫌そうな文字が浮かんできた。

<変だとは何でござるか!? あれは由緒正しき我が国の伝統文化として
 伝わる詩により書いたものでござる!!>


誰が何と言おうと、伝統文化だ。
何せこの俺は、小さい頃は妹弟たちにこうして絵を書くのだと手本付きで
教えてたんだからな!!

しかも、その頃に書いた絵は全て院長が大事に持ってて、それをあとで
知った亮一たちが恥ずかしがって院長に何とか捨てるように言っていた所を
俺がなだめたと言う逸話がある。
……でも、やっぱりあのロボットはタヌキに見えるのか。

ちなみに “ござる口調” なのは、一応相手はあのリドルなわけだし、
俺の素性を知られないためでもあったりする。
断じて、笑いを誘うとしてるわけじゃないんだぞ!?

<それに、お主が誠の英国紳士ならば、名を聞く時は己から名乗るもので
 ござろう?>


『……闇の魔術が詰まってるとはいえ、人の日記に勝手に変なタヌキの
 絵を書いてそれはないだろう……』

サラザールみたいな突っ込みは却下だぞ☆
……タヌキじゃないけど。

<はあ……。僕はトム・M・リドル。それで? 君は一体誰だい?>

どうやらリドルは、ヴォルデモートとは違って、昔はちゃんと “僕” って
言ってるみたいだった。
学生時代から “俺様” って言ってたなら、多分誰も傍について
来たがらないだろうけど。

<おお、お初にお目にかかる。拙者は東の小さな国からはるばる英国へと
 やってきたサクヤ・サキヅキと申すでござる>


もちろんござる口調を通して、男としての偽名を書き込む。
地を出さないように気をつけながらも、ノリノリな俺。
俺のふざけた文字に、リドルがイラつきながらも律儀に文字を返してくるのが
かなり面白くて、真面目に笑いが止まらない。
さっきの突っ込みで硬直が解けたらしいサラザールは、すっごい楽しんでる
俺のことをジト目で見てる。

ちょっと呼吸困難になってきたぞ。

<……サクヤ・サキヅキ、ね……。一応覚えておいてあげるけど、
 もう落書きしないで>


変な絵から落書きに転落?

<すまなかったでござるよ>

最後にそう一言書いて返事を待たずに日記を閉じる。
ぜーぜーと肩で息をついていると、サラザールが長い長い溜息をついて、
俺を鋭く睨む。

「やりとげた!」
やりとげたじゃない!……まったく……お前は本当に用心が
 足りなさすぎるぞ、アオイ!!』

とっても爽やかな笑顔で額の汗をぬぐう。
そんな俺に向かって、サラザールは本気で一喝してきた。
うーん、ちょっとやりすぎたかと思ったけど……。

「あれくらいふざけてた方がいいんだって! 確かにまったく関わらない方が
 無難だけど、まあ、どうしたって関わる時は関わるもんだし……それなら、
 こうやって地を見せない方がいいだろ?」
『お前のは理屈じゃなくて、屁理屈だろう……』
「でも、心配してくれてるのは分かるから気をつけますです」

にっこりとサラザールに笑顔を向ける。
もっと盛大な溜息をつかれた。
妹だったらもっとおちゃらけた調子で、書き続けると思う。





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